研究課題
平成26年度には、東日本大震災直後およびそれ以後、照明環境上の変化や被害が大きかった東北および原子力発電所の停止などによる、関東、東海各地の節電時の照明環境事情について資料収集を行うとともに、節電を想定した暗い照明環境下(薄明視)での見えに関する最新の研究成果を、海外調査および国際会議などに参加して収集した。また、企業の技術者に対して、節電、省エネに関連した照明環境上の問題点や整備状況についてヒアリングを行い、近年普及が進むLED照明による問題点についての情報を収集した。CIE(国際照明委員会)に参加し、同様の考えを持つ研究者間の情報交換ができる機会を設け、国内外の研究者にヒアリングを行って情報を得るとともに、高齢者の視認閾値に関する基礎的なデータを分析し、日本建築学会論文集(環境系)に投稿して採録が認められた。研究者間の情報交換を通じて、東日本大震災の記録や証言に関する資料を入手することができ、それに基づいてロービジョンに対する節電に関連した照明環境整備上の問題点を抽出した。さらに、視覚障害者および車いす使用者を対象に、大阪市内の地下通路での移動に関する評価実験を行って、光環境・視環境上の現場の問題点について、具体的にその内容を抽出した。これを、日本建築学会主催によるシンポジウムを企画し公表した。これらの研究活動をもとに、次年度の実験企画を行っており、さらに以前に視覚障害者(弱視者)に対して行った実験データを再分析を加えて、その準備を進めるに至っている。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要でも述べたように、節電を想定した暗い照明環境下(薄明視)での見えに関する最新の研究成果を調査するとともに、国内外の会議に参加して多くの情報を得ることができた。また、企業の技術者や他大学・企業研究者とも連携して、照明環境上の問題点や整備状況、および近年普及が進むLED照明による問題点についての情報を収集することができた。海外調査、国内調査によっても、具体的な問題点を抽出し、次年度の視覚障害者(弱視者)に対する実験企画に向けて準備が進んでいる状況であり、おおむね順調に進展しているといえる。
平成27年度前半は、前年度の研究実績に基づいて、ひき続き研究代表者および分担者が協力して、節電を想定した暗い照明環境下(薄明視)での見えに関する最新の研究成果を、海外調査および国際会議などに参加して収集する。東日本大震災直後およびそれ以後、照明環境上の変化や被害が大きかった東北および原子力発電所の停止などによる、関東、東海各地の節電時の照明環境事情に関連する資料についてもさらに整理、分析する。また、平成27年度は視覚障害者を対象とした実験企画について、光環境の「輝度」に着目したデータを収集することを念頭に、具体的な計画を立てて予備的な実験を実施する。一方、平成27年度には、イギリスで開催されるCIE(国際照明委員会)や日本建築学会大会などに参加して、暗い環境(薄明視環境)における視認性に関する研究成果発表を行う。その際には、国内外の研究者との情報交換を行って、今後の研究推進に向けて最新の情報の入手に努める。さらに、国内外のロービジョンに関連する既往研究の調査を行い、前年度の調査に対する分析結果と既往研究調査の結果をもとに、ロービジョンに対する節電時の照明環境上の問題点を明確にして、照明設計のための資料を提示することを目的とした評価実験研究の企画を完成させる。研究代表者および分担者が過去に得た、ロービジョンの視認能力に関する基礎的研究成果を視点を変えて再分析し、本研究の成果へと結びつける。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 5件)
日本建築学会環境工学論文集
巻: 709 ページ: 203-210
福祉のまちづくり研究 日本福祉のまちづくり学会論文集
巻: 17 ページ: 1-12