研究課題/領域番号 |
26289209
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森 傑 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80333631)
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研究分担者 |
栗山 尚子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00362757)
森下 満 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10091513)
野村 理恵 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20599104)
池添 純子 (奥山純子) 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50515624)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集団移転 / コミュニティ / 合意形成 / 意志決定 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
岩手・宮城・福島3県の沿岸部は30年後、東日本大震災の影響を考慮しなくとも人口が3~4割減という状況となる。復興における集団移転は、災害前から既に抱えていた過疎化・限界化と向き合わなければならない。本研究は、A.東北被災地における協議会型集団移転事業の俯瞰的・体系的整理、B.東日本大震災以前の集団移転に関する歴史的再考と体系的再評価、C.パイロット的事例にみる集団移転の制度的フレームの課題特性の比較分析、D.人口3割減時代の再定住モデルの理論構築とアクションリサーチによる実地検証により、集団移転によるレジリエント・コミュニティの実現へ向けて、災害復興および防災対策を通じて人々が自立的・持続的に生活できるための集団移転の次世代計画論とその適用の具体的方策の確立を目指す。 3年間の実施計画として、A~Dの課題群に対して以下の8項目を遂行する。平成27年度は主として課題AおよびCに重点を置き、(4)~(5)に取り組んだ。(1)東北被災地における集団移転の事業計画と実施動向の把握、(2)協議会型集団移転の計画プロセスと進捗状況の整理、(3)津波被災による国内集団移転の歴史的・経年的レビュー、(4)オーストラリアにおける土地交換プログラムによる集団移転のケーススタディ、(5)先行・予防移転の模索にみる防災集団移転促進事業の制度特性分析、(6)集団移転による持続的なまち実現へ向けてのアクションリサーチ、(7)パイロット的事例の比較分析による復元力のある再定住モデル、(8)人口3割減時代のレジリエント・コミュニティを実現する次世代計画論の実証的構築
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(4)オーストラリアにおける土地交換プログラムによる集団移転のケーススタディ/クイーンズランド州ロッキヤーバレー・グランサム地区における土地交換プログラムに注目した。ロッキヤーバレー地方は2011年1月10日の大規模な鉄砲水により、死者数19人、全壊戸数119戸、浸水戸数2,798戸の被害を受けた。ロッキヤーバレー役場は被災数日後に約900haの高台用地を確保し、農村部であるグランサムの人口減少対策を含むマスタープランを作成、約100世帯の任意型土地交換プログラムを運用し、オーストラリア史上初の自然災害による集団移転事業を実施した。マッコーリー大学自然災害研究所およびロッキヤーバレー役場の協力のもと、復興計画・住宅地計画の特徴および入居後の経年変化について、現地調査および関係者へのヒアリングを行った。 (5)先行・予防移転の模索にみる防災集団移転促進事業の制度特性分析/東北被災地における集団移転の計画支援とそれに関する調査研究を踏まえ、東日本大震災の復興計画と復興事業の特徴を整理し、その特有の構造と課題を考察した。将来の南海トラフ地震により深刻な津波被害が予想される静岡県沼津市内浦重須地区は、2012年7月から研究代表者を講師に招き、東日本大震災を機に全国ではじめて自治会として被災前の集団移転の検討に動きだした。また、徳島県美波町木岐奥地区では、徳島県建築士会の「こうのすまい」構想のもと段階的な高台移転に取り組んでおり、研究代表者らとの継続的な情報交換を行っている。これらの実験的事例から浮き彫りとなりつつある、現行の防災集団移転促進事業の制度的な特性と先行・予防移転への適応における諸課題について議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、課題CおよびDに重点を置き、(1)~(5)に継続して取り組み、(6)の追跡調査を踏まえ、(7)(8)の考察へ繋げる。 (6)集団移転による持続的なまち実現へ向けてのアクションリサーチ/宮城県気仙沼市小泉地区の集団移転は、協議会型における合意形成や意思決定、住民主導による復興まちづくりの模範的な事例として、国内外から大きく注目されている。住民組織の株式会社化の取り組み(住宅資材の一括発注や商業施設・メガソーラーの誘致)や被災者個別の住宅再建などへ直接的に関与しながら、不確定な中で進めざるを得ない復興の現実に迫り、タイムリーかつリアルなレビューに取り組む。 (7)パイロット的事例の比較分析による復元力のある再定住モデルの検討/特に(4)~(6)のパイロット的事例のケーススタディとその比較を行い、復興・再生へ向けての実用的で汎用性のある知見を理論的・実証的に検討し、集団移転によるレジリエント・コミュニティの実現へ向けての再定住モデルを考案する。 (8)人口3割減時代のレジリエント・コミュニティを実現する次世代計画論の実証的構築/(1)~(7)の成果を踏まえ、人口3割減時代の再定住モデルの計画理論の検証を行い、ローカル・コミュニティの復元力を継承し再構築できる集団移転の制度およびシステムのあり方と、人々が自立的・持続的に生活するための次世代計画論とその適用の具体的方策の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
オーストラリアにおける土地交換プログラムによる集団移転のケーススタディに関して、平成28年度にて集団移転の制度・システムの国際比較を行うことが有意義であると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
オーストラリアにおける土地交換プログラムによる集団移転について、パイロット的事例としての位置づけのもと、現地調査および関係者へのヒアリングのための外国旅費として使用する。
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