研究課題/領域番号 |
26289232
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高橋 有紀子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主席研究員 (50421392)
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研究分担者 |
宝野 和博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 拠点長 (60229151)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FePt / エネルギーアシスト磁化反転 |
研究実績の概要 |
本研究は4Tbit/in2を超えるハードディスクドライブ(HDD)の実現のために、微粒子・共分散・高アスペクト比・高異方性・低スイッチング磁場分散を満たすL10-FePtグラニュラー媒体の開発を行うと同時に、熱・高周波磁場および光のエネルギーアシストを行うことによる磁化反転制御を行うことを目指している。 FePt媒体の微細構造制御では、成膜中にC濃度を変化させることによりアスペクト比が約2の柱状構造の作成に成功した。このときの平均粒子径が約6 nmであった。本プロセスでは、全膜厚の半分までC濃度を徐々に減らし、その後増加させている。最初にC濃度を減らすことによりePt成長中にCがFePt上に移動するのを避け、その後C濃度を増加させることにより粒子サイズの増加を避けることが狙いである。微細構造観察の結果、薄膜の成長中に粒子の合体が起こっていないことを確認し、それが柱状構造実現の鍵であると考えられる。 本研究のもう一つの課題であるエネルギーアシスト磁化反転では、熱・高周波磁場・円偏光を印加することにより、磁化反転磁界の低減を目指している。FePt-C媒体に円偏光を照射することにより、円偏光の極性に応じた磁化反転を確認し、最大50%の磁化反転が定量的に観測された。さらに2 kOeという小さな磁場を印加することにより完全磁化反転が起きることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細構造制御では最も難しいと予想していた柱状構造を、成膜プロセスの工夫により実現することができた。また詳細な微細構造解析により膜の成長中に粒子密度は変化していないことがわかり、粒子サイズ低減のための指針が得られた。また、エネルギアシスト磁化反転では、小さい磁場と円偏光の併用により完全磁化反転が実現できること、またそれが二色性による蓄積的な磁化反転であることを解明した。本結果は磁気記録分野に非常に大きなインパクトを与えている。
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今後の研究の推進方策 |
FePt媒体の微細構造制御では、柱状構造と粒子サイズの低減の両立を試みる。一昨年度、高融点金属をシード層として用いることによる粒子サイズの低減を試みたが、成膜温度が600℃と高いためシード層の粒子合体が避けられなかった。本年度は高融点金属とCのグラニュラー組織をシード層として用い、柱状構造を有するFePt粒子のサイズの低減を試みる。 また昨年度までに、粒子サイズの低減のために、基板温度を低減してFePt-Cの成膜を行った。FePt粒子サイズは約4nmまで低減するものの、L10規則度が低下してしまい高い異方性が得られなかった。今年度は第3元素を添加することにより約4nmの粒子サイズと高異方性を両立するようなプロセスの開発を行う。 エネルギーアシスト磁化反転では、昨年度2 kOeの磁場を加えることにより円偏光による完全な磁化反転を実現した。円偏光のみで完全な磁化反転を実現するために反強磁性的な結合を利用する。また高周波磁場を印可した磁化反転磁場の低減は、FePt-Cグラニュラー薄膜の上にセミハード層を積層したECC媒体が適していると考えられる。計算により、効率的な磁化反転が得られるセミハード層と中間層の材料パラメータを検討する。
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