研究課題/領域番号 |
26289235
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 克郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90397034)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空気電池 / 元素戦略 / 固体電解質 / 革新電池 / イオン伝導体 / ナノポーラス金 / 空気極 |
研究実績の概要 |
近年、研究進展の著しい金属空気電池の可能性を検証するため、本研究では負極で一般的なリチウムに対してナトリウムを、電解質では主流の非水系に対して水溶液系を選択し、この組み合わせを実現するために、高速ナトリウムイオン伝導体であるナシコン・セラミックスをセパレーターに導入した、「水溶液系ナトリウム-空気電池」の実証を行った。正極として比較的一般的な形態である、活性炭に酸化マンガン系の触媒を担持した多孔質電極を用いたところ、室温で面積当たりの出力値~20~40 mW/cm^2を得た。これはリチウム、ナトリウム-空気電池を通して最大の値であり、ナトリウム系と水溶液系の組み合わせによる高出力化のメリットを実証することができた。 さらに、非水系リチウム空気電池の正極に効果があるとされたナノポーラス金電極を水溶液系ナトリウム空気電池に適用した。セラミックスセパレータを用いた構造を利用することで、同一の電池構造で非水系および水溶液系の動作の差違を直接観測することができることに着目した。結果として、起電力、過電圧の抑制、放電容量いずれにおいても水溶液系の優位性を実証することができた。特に非水系の構成では、放電生成物の体積による放電停止が顕著で、かつ、大気中の水分等による感受性が高いのに対して、水溶液系はそもそも水分を内包することから明らかなように、大気中でも安定に動作した。すなわち本構成がアルカリ空気電池の共通課題である大気中での安定動作を解決する一手段を提供していることを明快に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画以上に、充電に適した空気極の微細構造に関する検討まで踏み込めつつある。また最終年度を想定した、新奇固体電解質の研究自体も本年度中に開始・進行させることができている。 一方、当初計画していた、電極および電解質界面の電荷輸送の促進に関するサブテーマは好適な結果を得ることができず、研究計画の修正を行った。この中でもナトリウム系ならではの好適な特性を見出しつつあり、成果としてまとめることができる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマとして進行している固体電解質のシート成形にめどをつけ、これまでの空気極構造の最適化や、電極界面の電荷輸送の最適化に関する成果を統合して、本系で達成できる、最大の出力上限を明らかにすることで、本系の可能性あるいは課題を抽出する。
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