空気電池系の主要な問題点を解決する手段としてセラミックス分離型水溶液系ナトリウム-空気電池の提案を行い、その特性向上のための、各要素部材の検討、特性向上のための要因を特定することを目的とした。この電池の構造は、Na負極-電解液-酸化物系のNaイオン伝導性セラミックス-水溶液系正極-多孔質電極の構造を有し、Na+イオンの高速拡散性と、水溶液へのNaOHの溶解度の高さから、高い出力と実効的な容量が得られることを特徴としている。 シート成型法によるナトリウム固体電解質の緻密化に取り組み、ガラス添加によるナシコン・セラミックスメンブレンの低温焼成緻密化に成功した。バルク体については既にSPS法を用いた緻密化を達成している。これらの方法論を正極物質系にも展開できる。 さらに、金属Na負極とナシコン・セラミックス界面の輸送特性を調査し、Li-固体電解質系と比べて、低い抵抗を有することが分かり、Na系の優位点を示した。一方で、デンドライト短絡の抑止は、電気抵抗の低減にもかかわらず、Li系と同等の特性を得ており、その解決のための課題が残された。負極電解質として、従来の有機電解液系の不安定性を改善するために、新たにイオン液体の適用を試みたところ、80℃付近での比較的高温域での動作が可能となった。また、負極の使用効率が100%となることが示された。 多孔質の空気極の特性向上のために、メソポーラスシリカをテンプレートとした多孔質カーボン電極の導入を行い、とりわけ酸素還元特性、酸素放出の向上に効果があることを見出した。またグラフェンを用いた合材電極でも好適な特性を得た。
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