研究課題/領域番号 |
26289237
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
楠 美智子 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (10134818)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / ナノ粒子 / 表面分解 / カーボンナノチューブ / 高比表面積 / 高配向 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノサイズのSiC粒子をSiC表面分解法によりカーボンナノチューブ化し、均質な細孔構造と高比表面積を有する、次世代電池・キャパシタのキーマテリアルとなる新規ポーラスカーボン材料を開発することを目的とする。 これまでに、ナノSiC粒子を用いて、従来のSiCのCNT化に用いてきたものと同一の装置を用いて予備的にCNT化を行ったところ、初期に約50nm程度の粒径を持ったSiC粒子から得られたCNT集合粒子もまた、SiC粒子の径と構造を反映したものであった。これは、本研究で目標とするような超高比表面積ポーラスナノカーボンは実現可能であることを意味している。しかしながら、このような粒子は、粉末全体に対してごくわずかしか存在しない。すなわち、収率が極めて低いことが問題である。 そこで、本年度はCNTの高収率化へ向けて、まずはナノSiCをCNT化するのに適した高温炉の設計と製作を行なった。ナノSiCの特徴として、粒径が極めて小さいことから、それらが凝集しやすく、それぞれの粒子表面に雰囲気ガスが行き渡りづらい。そこで、粉末を分散させて置くことができるような、均熱帯が広い炉で、ガス導入の可能な管状炉を作製した。アルミナ管を用いたにもかかわらず、まずは、微量のSiC粉末であったが、この炉を用い、1500℃においてSiC表面分解の現象が起こっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた広域加熱可能管状炉の作製を完了し、予備実験まで行ったことから、概ね順調に計画が推進されていると言える。従来までの研究では、簡便なアルミナ管を用い1500℃の真空加熱実験は真空度の問題、アルミナ管内壁の劣化により、困難であった。今回は、カーボン管を内側に配することで、アルミナ管の劣化を防ぎ、長時間加熱が可能であることが確認され、管状炉でのSiC熱分解実験が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
27年度以降は、従来の炉でのナノSiCのCNT化を引き続き行うとともに、初年度に導入した高温雰囲気炉を用いて、分解条件を最適化することで、CNT化を試みる。仮に、直径50nmのCNT集合粒子が得られれば、かつてない超高比表面積のポーラスナノカーボン材料が実現でき、電池・キャパシタ応用において画期的な成果となる。そのため、27年度には比表面積を測定するための表面分析装置を導入し、研究の進展に役立てる。 実際には、ナノSiC粒子の凝集が、本研究目的の実現へ向けて最大の障害となると考えられる。その克服のために、ナノ粒子の集合体付近の雰囲気、ナノ粒子の分散のさせ方や担持方法について徹底的に検討を行い、初年度に導入した炉を改良しながら研究を進める必要がある。 また、ナノ粒子そのものの比表面積が大きいことも、分解させなければならない表面が多いことを意味するため、CNT化を阻害する要因となる。これに対して、CNT化は基本的には減圧下でのSiCの分解により生じるが、雰囲気中でのCOガスが分解を促進させることもわかっている(J. Phys. D: Appl. Phys., 40, 6278 (2007).)。従って、適量のCOを導入することで、ナノ粒子に対してもCNT化を効果的に進められると期待されるため、炉にCOガスを導入するための治具を取り付け、安全面も含めて改良していくことで、これらの問題を解決していく。
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