研究課題/領域番号 |
26289237
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
楠 美智子 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10134818)
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研究分担者 |
乗松 航 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30409669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SiC / CNT / 高密度・高配向 / 表面分解 / TEM観察 |
研究実績の概要 |
初年度、アルミナ管(直径50mm、長さ1200mm)を用いた簡便な管状炉内においても微量ながら真空中においてSiC粉末から表面分解現象により、高密度カーボンナノチューブ(CNT)が形成されることを確認した。しかしながら、CNTが形成されている粒子の割合は10~20%と低く、多くの粒子はグラフェイトが形成されていた。 H27年度においては、このCNT生成の割合を高めるため、当初の計画に沿って、SiC原料粉末の支持用ケースの改良を行った。まず、筒状のカーボンケースの内壁を波状に加工し、SiC粉末を搭載した。さらに、このケースの片側に管状炉の外にまで通じる炭素の軸棒を取り付けモーターと接続させた。このモーターによって、軸棒からカーボンケースに回転を伝え、ケース内の粉末が回転によって出来るだけ舞い上がり、撹拌されるように工夫した。回転は10回、20回、40回/分と変化させた結果、20回/分が最適な回転数であることが明らかになった。回転数が小さいと粉末の撹拌が不十分であり、また、回転数が高すぎると、SiC粉末は遠心力によって内壁に張り付いてしまい、撹拌が出来なかった。回転中の真空はO-リングにグリースを施すことにより保持された。熱処理条件は、5x10-3Torrの真空中において1500℃、2時間行った。得られた粉末をTEM観察した結果、40~60%のSiC粒子に約40nmの長さのCNTが高密度に形成されていることが確認された。SiC粉末が舞い上がることにより、より多くのSiC粉末の表面において残留酸素との反応が促進し、表面分解によりCNTが形成されたと考えられる。今後は、一度に処理するSiCの粉末の量を増加させることを検討してゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SiC粉末の支持用基板を回転可能なカーボン筒を用いることにより、簡便なアルミナ管状炉を用いてもCNT化の生産効率を2倍以上に向上することに成功したため。しかしながら、SiC担持量が多くなってくると、回転ケースからSiC粉末が飛散してしまう問題が生じる。今後は、SiCの粒径に応じ、飛散を防ぐためのカーボンケースの工夫を進めてゆく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、よりCNT化を促進するため、計画研究に沿って ①ガス導入口を取り付け、炉内の酸素雰囲気の制御をすすめる。 ②SiC粉末支持用カーボン筒の粉末量に応じた回転速度の最適化を図る。 ③一回にチャージするSiC粉末の量による、CNT化の影響を調べる。 ④用いるSiC粉末の粒径のナノ微細化をすすめ、粉末の飛散を制御する方策を開発する。 以上の実験から、効率的な高密度CNT形成技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
加熱炉中でのSiC粉末支持用カーボン筒の回転により、筒内にセットしたSiC粉末が高温加熱時、回転するとともにこぼれ落ち、飛散してしまうという問題の解決のための装置の改良に多くの時間を費やしたため、炉内への真空環境、微量酸素ガス導入のための治具の改造が遅れ、H28年度に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
1x10-2 Paを維持したまま微量酸素を供給しながら、カーボン支持筒を回転させるため、真空環境を整え、同時に炉内への微量酸素ガス導入用治具の改造を行い、粉末の回転とガス導入を同時に行う。
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