研究課題/領域番号 |
26289239
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小俣 孝久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80267640)
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研究分担者 |
喜多 正雄 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 太陽電池 / セラミックス / 先端機能デバイス / 光物性 |
研究実績の概要 |
平成27年度は前年度に引き続き、スパッタ法により作製したβ-NaGaO2薄膜のイオン交換によるβ-CuGaO2薄膜の作製を行った。前年度と同様なスパッタリング条件で堆積したβ-NaGaO2前駆体薄膜をイオン交換して作製したβ-CuGaO2薄膜のSEM観察の結果、Na+→Cu+へのイオン交換処理により、薄膜に微細な亀裂が生成することが明らかとなった。これは、得られた薄膜の配向方位が110および100方向であり、イオン交換によるそれらの方位の収縮は、それぞれ5.3%、8.2%と大きいことが原因である。010方向に配向した膜が得られれば、イオン交換による収縮は0.6%と小さいので、この方位の配向膜が得られるスパッタリング条件を検討した。スパッタリングガス組成、rfパワー、スパッタガス圧力に加え、サファイアC面、A面、R面、石英ガラスなどの基板上への堆積も行ったが、いずれの条件でもイオン交換による収縮の大きい110および100配向膜が生成した。 スパッタリング法では、基板上に到達する粒子の運動エネルギーが大きいため、基板材料の影響が小さいと推察し、より粒子のエネルギーの小さい電子ビーム蒸着によるβ-NaGaO2薄膜の堆積を検討した。その結果、サファイアC面上には110、A面上には121、R面上には200配向したβ-NaGaO2薄膜がそれぞれ堆積した。A面上に堆積した121配向膜の面内収縮率は4.1%とスパッタ膜のそれに比べ小さいので、イオン交換による亀裂を生成することなくβ-CuGaO2薄膜が得られるものと期待される。しかしながら、薄膜の組成は堆積初期でNa0.86GaO2-δ、継続するとNa0.37GaO2-δのようにNaが大きく欠損しており、結晶の質の観点からこの薄膜は好ましくないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではp型、n型ドーピングしたβ-CuGaO2薄膜の堆積条件の検討までを平成27年度に行う予定であったが、スパッタリング法による前駆体β-NaGaO2薄膜の配向方位制御が予期していた以上に困難であり、当初想定していなかった蒸着法での成膜を検討する必要が生じたため、不純物ドーピングまでに至らなかった。しかしながら、この検討を通し、A面サファイア単結晶基板上には、イオン交換による面内収縮の小さい121配向したβ-NaGaO2が堆積することが明らかとなっているので、この知見は今後の展開に大いに生かされる。 また、当初予想していた熱CVD成膜装置を使用したMOCVD法による薄膜の堆積も、前記の理由により本年度行えなかったが、スパッタ法や蒸着法などのPVD法では、化学量論組成のβ-NaGaO2薄膜の堆積が困難であることが明らかとなった今、良質の前駆体β-NaGaO2薄膜を得る最も期待できる方法となっている。これらを明らかにできたことを考慮に入れると、全体としては計画よりやや遅れている状況と言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
前記のようにPVD法では良質の前駆体β-NaGaO2薄膜が得られないことが明らかとなったので、CVD法によるβ-NaGaO2薄膜の作製に方向を転換する。Na原料には、Na(ac)、Na(acac)などを使用し,Ga2O3で実績のあるGa(acac)3,Ga(hfac)3,Ga(OiPr)3などを初期の検討原料とし、必要に応じて適切なものを選択する。同時に不純物ドーピングの検討も併せて進め、平成27年度に生じた遅れを取り戻す。
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