研究課題/領域番号 |
26289242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大瀧 倫卓 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (50223847)
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研究分担者 |
渡邊 厚介 九州大学, エネルギー基盤技術国際教育研究センター, 助教 (40617007)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛 / 複合ドープ / 微細構造 / 熱電変換材料 / 粒界制御 / 熱伝導率 / フォノン散乱 / 複合構造 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずZnOをバルク母相としてAlとGaの複合ドープにより自発的に生成する第二相による熱電特性の変調機構を調べるために、焼結体の微細構造を詳細に検討した。 SEM/EBSD測定により、AlドープZnOとGa1%共ドープ試料はZnO相とスピネル相で構成されていたが、Ga2%共ドープ試料とGa3%共ドープ試料ではこれら2相の結晶構造とは異なる直線的な形態をもつ結晶粒が観察された。この相はGaのドープ量が多いGa3%試料の方が明らかに多く存在していることやXRD測定の結果から、Ga由来のホモロガス相ではないかと考えられる。またGaのドープ量が増えるにつれてZnO相の粒径は顕著に減少しており、粒界量はGa4%試料が最も多くなった。Gaドープ量の増加に伴うZnO相の粒径の著しい減少と粒界の増加、さらにスピネル類似相やGa由来のホモロガス相の生成が併発することにより、フォノン散乱が著しく増強されたものと考えられる。 一方、金属や半導体のナノ粒子やナノ構造体を複合したZnO焼結体の合成と物性評価について、液相前駆体法によるAg/ZnO焼結体の合成や、ZnO@TiNコアシェル構造ナノ粒子の合成と焼結体の合成に着手した。前者については金属Agナノ粒子の分散による顕著な導電率の向上が見られた。後者についてはTiO2被覆ZnOナノ粒子の合成に成功しており、今後TiO2シェルの窒化によりZnO@TiNコアシェル構造ナノ粒子が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に予定していた研究計画のうち、複合ドープしたZnOの微細構造と熱電特性については、ほぼ当初の予定どおり進行・達成されている。その一方で、研究分担者を追加したことにより、TiN被覆ZnOナノ粒子の合成と焼結など、当初の研究計画を超える方向への展開が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1)複合ドープZnOの微細構造と熱電特性について、Ga共ドープZnO試料中に生成する第2相の詳細を明らかにするため、高分解能TEMによる構造解析を行う。また、バルク試料の音速測定によりフォノン平均自由行程を求め、フォノン散乱機構を解析する。 2)Ga共ドープの効果とその機構について得られた知見を元に、劇的な熱伝導率低減が観測されているCu共ドープZnOについて、SEM/EBSDによる微細構造観察と高分解能TEMによる粒界構造の解析を行う。 3)金属-半導体界面や半導体-半導体界面といった種々のナノへテロ界面の影響を検討するために、金属や半導体のナノ構造体を複合したZnO焼結体の合成と物性評価について、液相前駆体法によるAg/ZnO焼結体の合成と熱電特性の解析を進める。特に金属Ag粒子の複合化による導電率の増大とフォノン散乱の増強が併発する条件を明らかにし、格子熱伝導率を抑制しつつ導電率を向上する材料設計指針を構築する。 4)さらに、ZnO@TiO2コアシェル構造ナノ粒子のTiO2シェルを窒化することによりZnO@TiNコアシェル構造ナノ粒子を合成し、焼結体合成時の拡散防止による粒成長の抑制と粒界構造の変調による、フォノンの選択的散乱と熱電能の増大を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
結果的に旅費に若干の残額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
実験消耗品の購入に充てる。
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