研究課題/領域番号 |
26289243
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
林 晃敏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10364027)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 全固体電池 / ナトリウム電池 / ガラス |
研究実績の概要 |
本研究では、高いナトリウムイオン伝導性を示すガラス系Na3PS4固体電解質をベースとして電解質の特性向上を図る。電解質の構造と特性の相関を基に、全固体ナトリウム電池に適した固体電解質の開発を目的とする。 これまでに、立方晶Na3PS4が析出したガラスセラミック電解質が室温で10-4 S cm-1以上の導電率を示すことを見出している。本研究では、PやSの部分元素置換が、特性や構造に与える影響について調べた。Na3PS4-Na4SiS4系について検討したところ、Na4SiS4の置換に伴って導電率が増加し、6 mol%置換組成でガラスセラミックスの室温導電率は最大の7.4 x 10-4 S cm-1を示した。この組成においては立方晶Na3PS4が析出しており、格子定数に大きな変化は見られず、格子間Naイオンの増大によって導電率が増加したと考えられる。次にPの一部をAlで置換したNa3PS4-Na3AlS3系ガラスセラミック電解質を作製した。Na3AlS3の置換量が10 mol%以下の組成においては、立方晶Na3PS4が析出しており、Alの置換量の増加に伴って格子定数が減少する傾向が見られた。Al置換量の増加に伴って導電率が減少したが、室温で10-4 S cm-1以上の値を保持した。一方、SをOに部分置換した75Na2S・(25-x)P2S5・xP2O5 (mol%)ガラスセラミックスを作製した。0<x≦5の組成範囲において、立方晶Na3PS4に加えてNa3POS3の析出していることが分かった。またxが増加するにつれて、立方晶Na3PS4の格子定数が減少することがわかった。室温導電率はxの増加に伴って減少し、x=5組成のガラスセラミックスは1.9×10-5 S cm-1の導電率を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、立方晶Na3PS4の元素置換が導電率に及ぼす影響について調べた。出発原料にPもしくはSの置換元素を含む化合物を用いてガラス化・結晶化することによって、目的の置換元素を含む立方晶Na3PS4が析出したガラスセラミックスの得られることがわかった。PへのAlの部分置換、およびSへのOの部分置換によって導電率が減少することがわかった。置換量の増加に伴って、立方晶Na3PS4の格子定数が減少しており、イオン移動のボトルネックが狭まったことが導電率減少の一因と考えられる。一方、PへのSiの部分置換では、格子定数に大きな変化は見られず、導電率は置換前に比べて増加することがわかった。以上の結果から、立方晶Na3PS4の格子定数を減少させずに、格子間Na+イオンを増大させることが、高い導電率を得る上で重要であるとの知見が得られた。よって、本研究は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、立方晶Na3PS4の部分置換による特性変化について検討する。本年度得られた知見を基に、元素置換による立方晶Na3PS4の格子定数の増加を検討する。また得られた固体電解質の導電率だけでなく、電気化学的・化学的安定性や機械的特性についても調べる。また電解質の合成方法として、遊星型ボールミル装置を用いたメカノケミカル法だけでなく、気相法や液相法を用いた電解質作製についても取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗物品の納期が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に消耗品費用として使用する。
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