研究実績の概要 |
電極活物質との固体界面形成の際に有用な、気相法や液相法によるNa3PS4電解質の作製を行った。液相法では、エーテル類を反応場に用いて立方晶Na3PS4の得られることを明らかにした。Na2SとP2S5の混合物に対して、1,2-ジメトキシエタンを加えて室温で撹拌し、得られた懸濁液を室温で真空乾燥することによって前駆体結晶が得られた。この結晶を270oCで熱処理することによって、主に立方晶Na3PS4が析出することがわかった。得られた粉末の成形体は室温で10-5 S cm-1以上の導電率を示した。一方、気相法の一つであるパルスレーザー堆積(PLD)法を用いて、Na3PS4薄膜を作製した。Na2SとP2S5からなる粉末成形体へKrFエキシマレーザーを照射した。シリコン基板上に成膜した薄膜は緻密でアモルファス化していた。得られた薄膜を270℃で熱処理すると、立方晶Na3PS4に加えて未知結晶も同時に析出した。薄膜の室温導電率を測定したところ、ガラスでは4.4×10-6 S cm-1、結晶化後では3.0×10-5 S cm-1となった。 Na3PS4電解質を全固体ナトリウム-硫黄電池へ適用した。熱含浸法を用いて活性炭(2200 m2 g-1)の細孔に硫黄を充填した後、電解質を加えてミリング処理することによって、硫黄電極複合体(硫黄含有量:40wt%)を得た。これを正極に用いた全固体電池は、室温、0.064 mA/cm2の電流密度で硫黄の理論容量に近い約1600 mAh/gの放電容量を示した。また、電流密度を4倍に増加した場合、電池は10サイクルの間、950 mAh/gの容量を保持することがわかった。
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