研究課題/領域番号 |
26289244
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
Dmitri Golberg 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノチューブグループ, グループリーダー (80354405)
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研究分担者 |
三留 正則 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノチューブグループ, 主席研究員 (50354410)
川本 直幸 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノチューブグループ, 主任研究員 (70570753)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | optoelectronics / photovoltaics / TEM / Nanotubes / Nanosheets |
研究実績の概要 |
ZnOナノワイヤーに関する、光-機械変形-電気の3事象現象について、高分解能電子顕微鏡(HRTEM)内における‘その場’光電流スペクトル測定に初めて成功した。‘その場’TEM測定専用に設計された装置は、走査トンネル顕微鏡(STM)探針と励起用光学システムが組み合わされており、ZnOナノワイヤーに歪みを加え、変形の各段階で光電流スペクトルを計測できるようになっている。TEM内でZnOナノワイヤーを曲げると、光励起電流スペクトルにおける3.3eV付近のピークが2つに分裂することが観察され、これは、ナノワイヤーの内と外で、圧縮、伸張に応じる異なる応力が発生していることに起因することがわかった。密度汎関数によるタイトバインディングモデルに基づいた理論シミュレーションの結果は、実験結果と良く一致しており、ZnOが曲げられたときの光電流スペクトルピークのレッドシフト、ブルーシフトは、Γ点における価電子帯の準位が分岐することと直接関係することが判明した。こうした歪み誘起分裂は、圧電光電工学(piezophototoronics)を発展させていく上で、重要な出発点になると思われる。 続いて、CdSナノワイヤーに関し、光電応答に対する曲げの影響を‘その場’TEM観察によって観察した。100個以上のCdSナノワイヤー1個1個について、その形状、結晶相、結晶構造をその場観察によって明らかにし、同時に、光電流の測定も行った。その結果、ウルツ鉱型結晶構造を持つCdSナノワイヤーに、z軸に垂直な弾性変形を加えても、光電流と暗電流に、変形させていない状態とほとんど違いは見られなかった。しかし、光電流スペクトルで、カットオフ波長端が、曲げに応じてわずかに1-5nm程度レッドシフトすることが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部励起光源、光学導入路、CCD、分光器を組み合わせた強力な光学測定システムを、高分解能電子顕微鏡の中で構築することに、世界で初めて成功した。300-1000nmの範囲の光学バンドギャップを持った、0次元、1次元、2次元ナノ材料からなる様々なナノスケール試料の合成を行った。ZnO、ZnS、CdS、MoS2、Si-Ge、TiO2、その他技術的に重要なナノ材料から、光電特性、光電池特性、ルミネッセンスなど豊富なデータを採取し、これらの知識が社会還元できるよう準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
300から1000 nmの広範囲の波長領域で空間分解カソードルミネッセンス測定を実施するため、高分解スペクトロメーター、高感度CCDカメラなど最適化された測定系を構築し、様々なナノ材料に対して分析を実施できるようにする。まず最初は、よく知られた光学材料(CdSナノワイヤー、CdSナノベルト、シリコンおよびシリコン-ゲルマニウムナノワイヤー、ペロブスカイトナノ材料など)を試料とし、測定系の最適化を実施する。次に、異なる形状、形態を持ったナノ材料からカソードルミネッセンス信号を、空間分解能10 nm以下で収集することを試みる。計測されるスペクトルの特徴と、個々の欠陥構造(空孔、格子間原子、転位、積層欠陥など)の関係を明らかにする。さらに、ナノ構造をたわませることで生じるバンドエッジ発光、光起電力変化を、1個のナノ物質から計測し、最新のフレキシブル光電素子における高度な機能開発につなげるための基礎物性測定を実施する。
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