研究課題/領域番号 |
26289248
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
廣瀬 明夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70144433)
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研究分担者 |
佐野 智一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314371)
松田 朋己 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30756333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 接合 / ナノ粒子 / セラミックス / 焼結 / 酸化物還元 / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
酸化銀還元反応を利用したAgナノ粒子その場生成による接合プロセスを用いて、金属と各種セラミックスの直接接合を行った。酸化物系セラミックスであるAl2O3に対しては、接合温度500℃、加圧力5 MPaの接合条件で27 MPaのせん断強度を得ている。次に、セラミックス基材として非酸化物系セラミックスであるAlN、SiCを用い、金属基材としてAuめっきCu試験片を用いて接合を行った。本接合法によりいずれのセラミックスに対してもセラミックスの表面メタライズ等の事前処理や接合雰囲気の制御を行うことなく、500℃以下の低温で接合を達成した。金属/セラミックス接合の場合、予熱プロセスがAg/セラミックス界面の接合強度に影響を及ぼすことがわかった。AlN、SiCそれぞれに対して予熱時間を最適化した結果、いずれも予熱時間9 minが最適となり、接合温度500℃、加圧力5 MPaの接合条件でせん断強度23 MPa及び20 MPaが得られ、いずれもPb-5Snを上回る強度となった。 次に、Al2O3の接合において、銀/Al2O3界面の接合機構を検討した。透過型電子顕微鏡を用いて銀/Al2O3界面組織を詳細観察した結果、界面に中間層は確認されず,焼結銀がAl2O3試験片に対して直接接合していることがわかった。X線光電子分光法による界面の分析を行った結果,銀はAl2O3表面の酸素原子と結合していることが示唆された。これらの結果を踏まえ,分子動力学シミュレーションを用いてAl2O3基材に対する銀の焼結挙動を評価した結果、電荷を持った銀イオンがAl2O3表面に銀の初層を形成した後に、銀ナノ粒子が濡れ広がり結合する様子が確認された。以上の結果より、酸化銀の還元によってその場生成した銀イオン粒子がAl2O3表面の酸素と結合することで、Al2O3の接合が達成されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度に引き続き、(1)酸化物還元反応を利用した接合法による各種セラミックスの接合性評価と接合プロセスの確立を行うと共に、(2)接合モデルの構築と接合機構の解明を行うことを当初計画として研究を実施した。(1)に関しては、昨年度のAl2O3の接合に加えて、非酸化物系セラミックスであるAlN、SiCの接合プロセスの確立を達成した。また、(2)に関しては、Al2O3と焼結銀との接合機構を接合部のナノレベル組織解析と分子動力学シミュレーションにより接合機構を明確化し接合モデルを提示することができた。以上の成果により、おおむね順調に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、非酸化物系セラミックスについても、接合部のナノレベル組織解析と分子動力学シミュレーションなどを用いて接合機構の解明と接合モデルの提案を行う。さらに、実用化を念頭に高温放置、温度サイクル試験による接合部の信頼性評価を行う。その結果の解析に基づいて、信頼性向上の方策を考察して、接合プロセス最適化にフィードバックすることで本接合プロセス実用化への指針を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額が異なった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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