研究課題/領域番号 |
26289250
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柳沢 雅広 早稲田大学, 付置研究所, 客員上級研究員 (20421224)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表面・界面 / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 / トライボロジー / 磁気ディスク / 埋もれた界面 / 分光分析 / ダイヤモンドライクカーボン |
研究実績の概要 |
本研究では、1 平方インチあたり4テラビット以上の超高記録密度を実現する次世代磁気ディスクに用いられる膜厚1nm 以下の極薄潤滑膜/保護膜の化学構造を測定する手法を開発し、膜および界面の解析を行うことにより、耐摩耗・耐食性の材料設計指針を提示することを目的とする。開発した測定技術は、静的構造解析に加えて摺動における摩擦・摩耗の状態をサブナノメートルレベルで動的な変化を観察して、潤滑膜や保護膜(ダイヤモンドライクカー ボン、DLC)の膜内や界面の構造変化を解析し、耐摩耗構造の指針を提示する。さらに、高湿度における腐食のメカニズムを解明し、保護膜/磁性膜界面も含めて防食構造の指針を提示する。今年度は上記測定装置を用いて、パルスレーザー加熱による極薄(2nm)DLC膜の耐熱性を測定した。次世代超高密度記録方式の熱アシスト磁気記録の条件(327℃、1回当たり5ns、累積加熱時間0.5ms)では、DLC膜の劣化は問題ないことを明らかにした。またCVD膜よりもFCVA法によるta-C膜が最も耐熱性が良いことを明らかにした。また金属磁性膜中に酸化物を含むグラニュラー媒体を用いて、金属とDLC膜の加熱温度が異なり、金属をキュリー温度(600K)まで加熱するとDLC膜は500℃まで加熱されることを明らかにした。しかしそれにも係わらずDLC膜の耐熱寿命はパルス加熱により問題ないことを明らかにした。また加熱温度による膜の劣化を迅速に測定できる、パワー可変照射機構を開発し、室温から最大1000℃程度まで連続的に加熱しながらラマンスペクトルを同時観察した。その結果、He中での加熱は空気中加熱よりも熱伝導率により温度が10度以上下がることを明らかにし、He封入ディスクドライブの可能性を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度で完成した励起レーザーのパルス化機構と連続パワー可変機構により、DLC膜の耐熱性の測定と寿命推定が可能となった。またアンチストークス線とストークス線の比から測定する温度測定法により、加熱によるDLC膜、磁性膜およびその界面の温度分布を測定することに成功した。また開発したラマンスペクトルとトライボロジー特性を同時に測定する装置と耐摩耗性プラズモンセンサを用いて摺動時のDLC膜の摩擦力と化学構造の変化を測定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
開発したラマンスペクトルとトライボロジー特性を同時に測定する装置と耐摩耗性プラズモンセンサを用いて、潤滑膜の挙動を明らかにするとともに保護膜や潤滑材料の設計指針を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試作品の予定納期が今年度で間に合わなかったため、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
トライボロジー測定機構の改造
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