研究実績の概要 |
本研究では、1 平方インチあたり4テラビット以上の超高記録密度を実現する次世代磁気ディスク方式(熱アシスト磁気記録HAMR)に用いられる膜厚1nm 以下の極薄潤滑膜/保護膜の化学構造を測定する手法を開発し、膜および界面の解析を行うことにより、耐摩耗・耐食性の材料設計指針を提示することを目的とする。開発した測定技術は、超高感度プラズモンセンサにより深さ分解能 0.1nm で極薄膜および界面の化学構造分布を表面増強ラマン散乱スペクトルにより測定する。また静的構造解析に加えて摺動における摩擦・摩耗の状態をサブナノメートルレベルで動的な変化を観察して、潤滑膜や保護膜(ダイヤモンドライクカー ボン、DLC)の膜内や界面の構造変化を解析し、耐摩耗構造の指針を提示する。さらに、高湿度における腐食のメカニズムを解明し、保護膜/磁性膜界面も含めて防食構造の指針を提示する。今年度は上記測定装置を用いて、さまざまなカーバイド系保護膜(SiC,TiC,WC)の極薄膜をプラズモンセンサに被覆し500℃でレーザー加熱を行った結果、カーボン膜は酸化分解を生じるのに比べカーバイド膜は変化が無く優れたHAMR耐久性が確認された。また潤滑膜がレーザー加熱の際に磁気ディスク面から蒸発し、センサ側へ移着することが確認された。また耐摩耗性プラズモンセンサを開発し、1Nでの磁気ディスクと同センサの摺動時における極薄DLC膜の化学構造変化と摩擦力の同時測定に成功した。また同センサはHAMRにおける加熱ヘッドである近接場トランスデューサ(NFT)と同じメカニズムなので、同センサを摺動子に用いてレーザー加熱をすることにより、MAMRのエミュレーション実験が可能であることを示した。
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