研究課題/領域番号 |
26289252
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小泉 雄一郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10322174)
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研究分担者 |
千葉 晶彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00197617)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子ビーム積層造形 / 3Dプリンター / 人工関節 / 疲労破壊 / 相変態 / マルテンサイト / 結晶粒微細化 / 繰り返し変形 |
研究実績の概要 |
Co-Cr-Mo(CCM)合金は優れた耐摩耗性、耐腐食性そして生体適合性を有し、人工関節等に応用されている。加工性に優れないという欠点があったが、近年開発が進む電子ビーム積層造形(Electron Beam Melting: EBM)によって、自由形状成形が可能となり患者ごとに最適化された形状の人工関節の作製も可能となった。一方、EBM造形する際,造形水平方向によって異なる熱履歴を有することが知られているが、それらの熱履歴が及ぼす組織形成への影響は多くは不明である。CCM合金は相分布や結晶粒径に依存して力学特性や疲労挙動が大きく変化するため、熱履歴が及ぼす相分布への影響を調べることは造形物の信頼性向上のためにも重要な研究である。さらに、造形水平位置により異なる相分布を有するCCM合金に均一化熱処理を施し、疲労挙動の変化を調べた。 EBMを用いて直径18 mm高さ160 mmのCCM合金円柱試料を、中心軸が造形方向と平行になるように4×5に配列させた状態で20本作製した。各試料の高さ80 mmの部分から平板状疲労試験片を切り出し、各試料の組織分布を調べた。また、それぞれの試料にε化熱処理(750 ℃で12時間保持後水冷)とγ化逆変態熱処理(1000 ℃で10分間保持後水冷)、さらにそれらを交互に2回ずつ繰り返した繰り返し熱処理を行った。その後、応力振幅600 MPaでの疲労試験を行い、熱処理による疲労特性の変化を調べた。 γ相とε相が混在した初期組織をもつ平板状疲労試験片にγ化逆変態熱処理を施すと。γ相の微細粒が均一に形成された。これらを応力制御疲労試験供した結果,γ化逆変態熱処理した試料は長寿命を示した。これは粗大なγ粒の繰り返し変形時にSIMTでε相へのすべりの集中による急峻な表面起伏及びそれに伴う応力集中が、熱処理による結晶粒微細化によって抑制されたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた、ε単相化による疲労寿命改善の効果よりも、ε相をγ相に戻す逆変態熱処理により結晶粒が微細化され、疲労特性がさらに向上することを発見した。この発見により研究が、当初の計画以上に進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で発見された、逆変態熱処理による疲労寿命改善の機構を追求するとともに、さらに疲労寿命を改善できる熱処理方法を探索し、電子ビーム積層造形された人工関節の信頼性向上に資する、準安定結晶変形の学理を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末に成果発表のために出席した日本金属学会および日本鉄鋼協会の参加費を本基金で支出する予定だったが、研究発表の内容を再検討する中で、他の研究費で支出することがより適切であると判断され、財源の変更を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
より本研究の成果の発表に相応しい学会への参加費に充てる。
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