研究課題/領域番号 |
26289253
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
増本 博 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (50209459)
|
研究分担者 |
野瀬 正照 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (70269570)
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, 電磁気材料グループ, 主席研究員 (70205475)
張 亦文 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30579959)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノ材料 / 磁性 / 誘電性 / 薄膜 / 磁気誘電効果 |
研究実績の概要 |
誘電セラミックス中にナノ磁性金属粒子を分散させた磁性体-誘電体ナノ複相構造薄膜(FeCo-MgF系)が、優れた高周波軟磁気特性や電磁波ノイズ遮蔽効果があることを見い出したばかりでなく、「トンネル型巨大磁気誘電効果(TMD: Tunneling Magneto-dielectric Effect)」という新しい複機能特性があることを平成26年度に世界で初めて発見し、Nature Communicationsに掲載された。 今年度は、そのメカニズムとして、①2個で1対をなすFeCoナノ金属粒子間の量子効果によって電荷の移動が発現し、それが誘電率の起源となること。②量子効果によるナノ金属粒子間のトンネル電流の大きさが磁場の大きさにより変化することが、誘電率が変化する磁気誘電効果の起源であることをつきとめ、これら構築した理論が実測値と良く一致することを証明した。 さらに「パルス加熱型ナノ複相結晶成膜法」を用いて、基板種類、基板温度、導入ガス、流量、炉内圧力、RF 出力、ターゲット組成等のスパッタ成膜条件を系統的に検討しながら最適条件でCo-HfN系およびCo-AlF系ナノ複相薄膜の作製と磁気・誘電特性の行った。その結果、優れた高周波軟磁気特性およびトンネル型磁気誘電効果を発現出来ることを見いだした。その結果が認められ、国際会議InterMag2015および日本金属学会春期講演大会において優秀発表賞を受賞している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度にFeCo-MgF系ナノ複相薄膜において見いだした新しい複機能特性である、「トンネル型磁気誘電効果」(磁場を印加すると材料の誘電率が磁場の強さに応じて変化する現象。室温で動作する。本研究グループで命名)の研究を平成27年度はさらに他の組成系へと発展させた。当初の計画通り「パルス加熱型ナノ複相結晶成膜法」によりCo-HfN系およびCo-AlF系ナノ複相薄膜の作製と磁気・誘電特性の評価を行い、高周波軟磁気特性およびトンネル型磁気誘電効果を発現出来ることを見いだした。このことを踏まえて当所の計画には無かった新しいアイディアである不連続分散したナノ複相構造膜を発案・設計・製作し、その成膜方法を用いた膜の磁気・誘電特性が、従来のナノ複相膜に比べて格段に向上できることを見いだしている。これら優れた特性を示したことや、特長のある新成膜方法であることなどの結果が研究実績の概要で記述した学会発表賞等において評価されたことから、当初の計画以上に進展していると考える。 (1)国際会議「Best Poster Award, 2015 International Magnetic Conference (InterMag2015), Structure and High-Frequency Magnetic Properties of Co-HfN Nanogranular Films., 2015年5月14日, China」 (2)国内学会「日本金属学会2016 年春期講演大会「第26回 優秀ポスター賞、Structure and Magneto-dielectric Responses of 2D Co/AlF Granular Films.、2016年3月24日 東京」
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、最終年度として、これまで得られた結果を基にして、引き続き「パルス加熱型ナノ複相結晶成膜法」および「差動排気型ナノ複相成膜法」によりナノ複相構造薄膜を成膜し、作製した膜の複機能物性を評価し、そのメカニズムを明らかにし、研究を総括する。 [A]作製した膜の磁気-誘電複機能物性(高周波磁気特性、磁気遮蔽、磁界誘起誘電効果など)、光-電気複機能物性(光-磁気特性、光-誘電特性など)の評価を行い、成膜条件とナノ複相構造膜の複機能物性との関係を明らかにする。 具体的には、①磁気-誘電複機能物性測定のために、微細加工設備を用いて評価素子に加工する。②既設の「磁気-誘電複機能物性評価装置」を用いて、評価素子の高周波誘電特性(誘電率、誘電損失、分極特性)および高周波磁気特性(透磁率、自然共鳴周波数、磁気シールド特性)、マグネトインピーダンス特性の評価を行う。③膜の作製条件と、膜構造・界面組織などの基礎物性、および磁気-誘電、光-磁気複機能物性との関係とメカニズムを明らかにし、複機能物性材料としての最適化を図る。 [B] 研究の纏めと総括 金属-結晶質誘電体ナノ複相構造薄膜を作製する手法の確立と、それらのナノ複相構造薄膜の基礎物性および機能物性評価結果、複機能物性の評価結果を基に研究結果を総括する。
|