研究課題/領域番号 |
26289256
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村田 純教 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10144213)
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研究分担者 |
山本 剛久 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20220478)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会基盤構造材料 / ミクロ組織変化 / 階層構造 / フェライト系耐熱鋼 / ニッケル基超合金 |
研究実績の概要 |
本年度は、ニッケル基合金における組織の不均一性とクリープ強度の関連に関するフェーズフィールド(PH)シミュレーションを行うとともに、階層構造のラスマルテンサイト相からフェライト相への経時変化の素過程として転位間反応による回復過程に関するPHシミュレーションを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 応力負荷により、立方体状のガンマプライム相が板状のラフト構造に変化し、その後、ガンマ相がガンマプライム相によって分断され孤立化するように崩壊する過程がシミュレートされた。これは実用合金で観察されるラフト構造崩壊の形態変化と対応していた。さらに、ガンマ相中に不均一な局所ひずみ分布が観察され、特にガンマプライム相間の幅が狭い箇所で、ひずみ量が多いことがわかった。また、ガンマプライム相の形状や配列を不均一にした場合、均一な組織に比べラフと構造の崩壊がクリープの早い段階から生じることが明らかになった。これらの結果から、実用合金で観察されるラフト構造の崩壊は、組織の不均一性により促進されることが分かった。 外部応力を加えたときの、(101)面における転位回復のシミュレーション計算の結果から、時間とともに初期に多数配置された転位の対消滅が助長され、数が減少していくことがわかった。算出した転位密度の時間変化から、初期に配置された転位密度が1桁程度減少することがわかった。その際、外部応力が大きいほど、転位が応力の影響を受けて易動度を増すため、転位密度の減少速度は大きくなることも分かった。さらに、転位性状をみると、時間の経過とともにらせん転位が主体となり、実際のフェライト系耐熱鋼で測定された実験結果と対応することがわかった。これは、比較的低応力では、転位密度の変化は刃状転位の移動に強く依存していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部、平成26年度に実施予定の実験が平成27年度に繰り越されたが、その代わりに平成27年度に実施予定の計算機シミュレーションを平成26年度に前倒しして実施した。その結果、平成27年度までに計画していた研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最終年度のまとめに向けて、階層構造合金のミクロ組織の時間発展と合金強度変化の関係づけを行う。まず、ニッケル基超合金では、γ’相の形態変化に伴う母相γ相のひずみ量をノートン則に基づく塑性理論により求め、クリープ中のひずみ増加量を算出し、実際のクリープ曲線との対応を調べる。 一方、ラスマルテンサイト相については、平成27年度に行った回復過程のシミュレーション結果を、これまで申請者らの研究室においてクリープ材を用いて実験的に調べた組織変化の結果と比較し、組織変化とクリープ強度の対応づけを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助として人件費(アルバイト代)を当初計上していたが、その必要がなくなったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の最終年度として、実験および研究のまとめを行うにあたり、物品費および研究発表旅費として使用する予定である。
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