マグネシウムを変形させると変形後期に{101-1}-{101-2}二重双晶が形成され,{101-1}双晶界面と{101-2}双晶界面が交差する粒界3重点がクラック生成の起点となり,破壊が助長されることが知られている.一方,アルミニウム (Al) やイットリウム(Y) などで合金化することによって,マグネシウムの延性が向上することは古くから知られている. そこで今年度は,YあるいはAlを偏析させた二重双晶と転位の相互作用を分子動力学計算で調べた. {101-1}双晶,{101-2}双晶,3重点,{303-4}界面で構成される純Mg二重双晶モデルを作製し,モンテカルロ法によりYおよびAlを偏析させた.得られた偏析二重双晶セルに局所的にせん断変形を与え,らせん転位を生成させ安定化計算を行うと,二つの部分転位に拡張した.安定化計算後セル全体にせん断ひずみを加え,部分転位を二重双晶方向に滑らせ,転位を二重双晶と衝突させた. 純Mg二重双晶では,先頭,後続の転位ともに双晶転位となり最終的に3重点に到達した.Y偏析二重双晶では先頭転位は双晶転位とならず,また双晶転位となった後続転位も3重点で堆積しなかった.Al偏析二重双晶では先頭転位が双晶転位となり界面に沿って移動した後,後続転位が界面に到達し吸収された.このようにY偏析とAl偏析で転位が二重双晶から受ける影響に違いは見られたが,結果を総括すると,Y,Alいずれも偏析によって3重点での転位堆積が抑制される傾向にあった.これがマグネシウムの合金化による延性向上の一因と考えられる.
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