研究課題/領域番号 |
26289258
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸田 恭輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20354178)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 変形双晶 / 変形機構 / 構造・機能材料 / 格子欠陥 |
研究実績の概要 |
構造材料の分野では変形双晶の利用による力学特性制御が重要視されているが,このためには変形双晶の核生成・成長に及ぼす因子の正確な理解と,核生成・成長機構の解明が必要不可欠である.本研究では新しい双晶変形モデルを提案し,変形双晶に及ぼす双晶面法線方向の垂直応力の影響などの様々な因子を実験・理論の両面から検討することを通じて,モデルの妥当性の検証を行うことを目的としている.本年度は昨年度に引き続き,変形双晶やそれに類似の変形帯の形成が知られている各種HCP金属,Mg-LPSO相,Ti3SiC2相(MAX相)の単結晶マイクロピラー圧縮による変形双晶形成条件の検討ならびに透過電子顕微鏡(TEM)による原子尺度での構造解析を中心に研究を行った. Mg-LPSO相単結晶マイクロピラーのSEM内in-situ圧縮試験では,c軸に垂直な荷重軸方位から圧縮した場合に複雑な変形帯組織が形成されることを見出したが,さらなる変形組織の解析の結果,このような変形帯構造は変形双晶の形成とその形成により生じたひずみの緩和のために付加的に導入される二次双晶とキンク帯が重畳した構造として理解できることを示唆する結果を得た.この仮説の検証のためには,変形帯組織形成の再初期段階における構造変化をとらえる必要があるが,このような変形帯組織の形成は非常に高速で生じSEM内の動的観察ではとらえることが困難であったため,新たにTEM内その場力学試験システムを他研究者の科研費研究課題と合算で導入し,双晶形成過程のより高速な動的観察に向けた予備実験に着手した.TEMによる原子尺度での構造解析ではMg-Al-Gd合金中のHCP-Mg相ならびにMg-LPSO相中において新たに形成を確認した{11-2l}タイプの変形双晶の境界面における原子配列構造の解析を行い,双晶界面の安定性についての検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度から行っている各種HCP金属,Mg-LPSO相,Ti3SiC2相(MAX相)のマイクロピラー圧縮試験をさらに進め,変形双晶や類似の変形帯構造の形成に関する様々な基礎的知見を得ることに成功した.これらのうちHCP-Mg相ならびにMg-LPSO相,Ti3SiC2相(MAX相)についてはTEM/STEMを用いた変形双晶を中心とする各種格子欠陥の原子尺度での構造解析を行い,双晶界面の安定性についての検討にも着手している.また本研究では変形双晶の形成過程の動的観察を重要と考えているが,今回,新たにTEM内その場力学試験システムを他研究者の科研費研究課題との合算により導入することができ,これを用いた双晶形成過程のより高速な動的観察に向けた予備実験に着手している.第一原理計算による構造最適化についても着実に進行している.得られた成果の一部は国内および国際会議において発表している.以上のように,おおむね予定通り研究が進行していると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究内容に引き続き,Ti, Mg, Mg- LPSO相を中心とする各種結晶性材料についてマイクロピラー圧縮試験と引張-せん断試験,TEM/STEMによる欠陥構造解析を進めるとともに,第一原理計算による理論的検討行う.特に新規導入したTEM内その場力学試験システムによる変形双晶の動的観察は非常にチャレンジングな研究であるが,これまでのマイクロピラー圧縮試験により得られている成果をもとに試料形状等の最適化を行うことで成果が得られると期待している.得られた結果をもとに変形双晶発現のための条件と原子クラスター回転子モデルの妥当性を検討し,数学的記述法の確立を試みる.現在までのところ,研究遂行上の大きな問題点はなく,研究計画の変更の必要はない.
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次年度使用額が生じた理由 |
新規導入したTEM内その場力学試験システム(Picoindenterシステム)用の試料には精密な加工が不可欠であるが,そのために様々な補助装置や消耗品等の導入が必要である.主装置の導入後すでに予備的な実験を開始しているがいまだ検討段階にあり,平成27年度中に試料作製条件の最適化に必要な補助装置,消耗品の発注までには至らなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度初頭にさらに検討を進め,順次必要な補助装置,消耗品の導入を行う予定である.
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