研究実績の概要 |
平成27年度は、平成26年度に実施した相平衡に関するデータを基づき作製されたFe-Al-X-Y(X=Ni, Co, Y=Ti, V)系合金単結晶試料の変形挙動を静的な組織観察により解明した。具体的に対象としたのは、Ni2AlTi, Ni2AlV, Co2AlTi, Co2AlVといったL21構造の析出物を有する単結晶である。Ni2AlTi, Co2AlTiを有する単結晶では、均質化熱処理後に室温まで徐冷することで析出物が粗大化するとともに、bcc母相中の1/2<111>転位が析出物を迂回した。しかしながら、析出物に有利な<001>転位ならびに<110>転位の運動は観察されなかった。その原因は、析出物が粗大でbcc母相とのミスフィットも大きいためである。一方、Ni2AlV, Co2AlVを有する単結晶では、微細なNi2AlV, Co2AlV析出物が観察されるとともに、結晶方位に依存して、1/2<111>転位と<001>転位の活動が認められた。しかしながら、Ni2AlV, Co2AlV析出物の溶解温度は、N2AlTi, Co2AlTiのそれと比べ低いため、高温にて強度が減少した。したがって、今後は、Ti, Vの共添加による析出物の溶解温度ならびに母相とのミスフィットのチューニングが不可欠である。また、L21析出物のサイズ、分布等を定量的に評価した上で、L21析出物による強化機構を定量的に考察した。その結果、いずれの場合も析出物による応力増加は、析出物内部の摩擦力に注目した析出強化の理論式で説明できることがわかった。
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