研究実績の概要 |
1. 四価元素添加(Ti,M)O2-xマグネリ相の作製 チタン酸化物マグネリ相においてTi2O3層におけるTiの価数は3価であり,TiO2層では4価であるとされている.したがって4価のイオンが安定で3価のイオンが不安定であるような遷移金属酸化物を添加すると,そのほとんどがTiO2層に固溶し点欠陥を形成することが期待される.そのような酸化物の中でTiO2と固溶体を形成することが知られているZrO2(U. Troitzsch et al. J. Mater. Sci. 40(2005) 4571)を0-10mol%添加した(Ti,Zr)O2および(Ti,Zr)O1.97を作製した.(Ti,Zr)O2では報告通りの固溶限を得ることができた.酸素欠損型マグネリ相についてもX線回折測定の結果,ZrO2がほぼ同様の固溶限まで固溶することが明らかになった.また,熱処理に伴う欠損酸素量の変化についても測定を行った結果,通常の10^-4Pa程度の真空度の場合,焼結中に特に目立った変化は起こらないことが明らかとなった.これにより,特に注意を払った焼結熱処理を行う必要がないこととなり,本マグネリ相の作製が容易であることが明らかとなった. 酸素欠損に伴う焼結性の低下はそれほど大きくないものの無視できないものであることが明らかとなった.これについてはグラファイトダイスを用いたHIP処理を行うことで十分な緻密質の試料を作製できることが明らかとなった.また,この場合もHIP処理に伴う酸素欠損量の変化は十分小さいものであることも明らかとなった.
2. 酸素欠損量の決定 酸素欠損量は超格子周期を決定する重要なパラメータである.酸素欠損量は直接面欠陥量に対応するため面欠陥の平均周期を測定することで決定することができる.図5に示すように面欠陥の平均周期をX線回折装置を用いて超格子構造に由来する回折ピークの回折角を測定することで決定した.ZrO2が固溶した場合についても,単相試料が得られた場合は同様にX線回折によって酸素欠損量が決定できることを確認することができた.
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