研究実績の概要 |
【四価元素複合添加(Ti,M1,M2)O2-xマグネリ相の作製】昨年度の研究で添加が可能であることが明らかになったZrO2に加えて,さらに重い元素で強いフォノン散乱が期待できる四価元素としてSnO2を選択し,その添加が可能であるかどうか実験的な研究を行った.その結果,TiO2-SnO2は高温で均一固溶体を形成するが,部分還元を行うと,SnO2のみが還元され,試料中に金属スズが析出することが明らかになった.また,金属スズを除くと(Ti,Sn)O2-xの還元量はSnO2が完全に還元されたとしたときの値と一致し,ほぼ100%に近い添加SnO2が金属スズに還元されることが明らかとなった.これはZrO2と複合添加したときも同様であり,ZrO2はマグネリ相中に固溶するがSnO2は還元され,マグネリ相中に固溶しないことが明らかとなった. 【添加元素の占有位置の特定】ZrO2を添加したマグネリ相を透過電子顕微鏡を用いて分析した.その結果,固溶したZrはマグネリ相中のTi2O3層にはあまり固溶せず,TiO2相中に優先的に固溶しているらしいことが示された.ただ,試料作製方法に問題があり,分析中の試料のドリフトが抑えきれなかったため,確定的な分析結果を得ることはできなかった.今後機械的に安定な検鏡試料を作製することで詳細な分析を行う. 【四価元素添加材の熱電特性の測定】ZrO2を添加したマグネリ相の熱電特性の測定を行った.期待通りZrO2を添加した時に熱伝導率の大幅な低下が見られたが,同時に電気的な特性が劣化する結果となった.この原因については今後明らかにする必要があると考えられる.
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