研究課題/領域番号 |
26289263
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
金野 泰幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50214482)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属間化合物 / 時効析出 / 強度 / 硬さ / 組織 / 合金設計 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
これまでの著者等の研究から、Ni基超々合金の2重複相組織を構成するNi3V(D022)は強化相としての役目を担う重要な構成相であることが分かっている。そこで、本合金の合金設計ならびに組織制御を行うための基礎的知見となるNi3V(D022)の合金化挙動を調べ、以下の結果を得た。Ni3VのNiを減じてMoを添加する場合、固溶限(2at.%)を超えるとbcc固溶体相である(Mo,V)s.sが出現し、硬さが大きく上昇した。Vを減じた場合では、固溶限の3at.%を超えるとMoNi(δ)が析出したが、この場合は硬さの変化はほとんど生じなかった。したがって、規則化したNi3VにおけるMoの固溶範囲はおよそ2~3 at.%であり、(Mo,V)s.sの固溶体相が出現すると硬さが上昇することが分かった。一方、Ni基超々合金(Ni-Al-V系合金)にWやMo添加すると2重複相組織中に析出が生じ、強度や硬さが向上する現象について、詳細な組織観察を行った。その結果、W、Moは高温相であるA1(fcc)相(Ni固溶体相)中には固溶するが、温度低下により析出あるいは分解(共析変態)反応によって生じるL12相(Ni3Al)やD022相(Ni3V)の金属間化合物相には固溶しない。このため、W、Moは2重複相組織のチャンネル部にW-richあるいはMo-richな第3相として析出する。チャンネル部に微細に形成する析出物は正方晶構造のNi4Wと、bcc構造のMo固溶体相と同定された。Ni-Al-V系にNbを添加したNi基超々合金では、Nbが金属間化合物相を安定化するため、WおよびMoの析出を助長する。W系およびMo系の析出物とも、2重複相組織を構成するL12相ならびにD022相と結晶学的整合性を有するため、高温においても安定な強化相として働き、高温耐摩耗性を必要とする高温工具や金型等への適用において効果を発揮するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ni基超々合金の合金設計ならびに組織制御を行う上で重要な知見となるNi3Vの合金化挙動について、Mo添加によるNi3Vの相領域や組織、硬さ変化の様相が明らかとなってきた。一方、Ni基超々合金の2重複相組織中に生じる特異な時効析出現象について、そのメカニズムを解明するとともに、時効硬化を最大限に引き出す合金設計ならびに組織制御プロセスについての知見が得られた。当初計画の準工業サイズの鋳塊作製については、汎用的な大気溶解鋳造試験を行った。真空溶解鋳造によらずとも実用レベルの鋳造品の作製が可能との感触も得られつつあるが、詳細については今後も検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の当初からの目標であるNi基金属間化合物合金の合金設計と組織生業に関する学理体系化と実用化に向けた基盤要素技術確立に力点を置き研究を進める。Ni基超々合金については、2重複相組織の強化相であるNi3Vの合金添加による組織と力学特性に変化に関する調査を進める。一方、Ni基金属間化合物合金の実用化研究については、肉盛や溶射などの表面改質技術への適用試験を行い、本合金を用いた耐熱耐摩耗・高耐食表面皮膜作製のための基礎的研究への展開も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度物品費については別予算を充当して当初予定計画内容の研究を実施したが、外注試験や試作品作製等については当初予想より試行回数を増やすことにより、研究がより効果的に遂行できることが判明したため、平成27年度費用の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
外注試料作製、試験・分析費、原料購入費、人件費・謝金などに使用する予定である。
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