研究実績の概要 |
Ni超々合金の合金設計と組織制御に関して、二重複相組織の強化相であるNi3Vの合金化挙動を調査してきている。平成28年度はNi3VにWを添加し、組織と硬さの変化を調べた。 その結果、(i) D022構造に規則化したNi3VにおけるWの固溶範囲はNi置換では1 at.%以下、V置換では4 at.%以下であり、Vと置換しやすい。(ii) 固溶限を超えると、粗大な析出物と微細な析出物が観察された。高温で生じた粗大な析出物はNi置換合金、V置換合金ともにW固溶体相であった。低温で生じた微細な析出物はNi置換合金ではW固溶体相、V置換合金ではNiW化合物相であった。(iii) 硬さへの影響は、(1) 母相のラメラ組織による強化、(2) 析出強化、(3) 固溶強化の順に大きくなることが明らかとなった。一方、Ni基金属間化合物合金を用いた耐熱・耐摩耗表面層(皮膜)については、SUS304基材上にレーザ肉盛によってNi基超々合金コーティング層作製を試み以下の結果を得た。(1) レーザ加工条件を適切化することで、基材との密着性に優れた健全コーティング層の作製が可能であることが分かった。肉盛相中には基材との希釈によって混入した約1.6 at.% Crと5.4 at.% Feを含有していた。肉盛ままでは本合金に特徴的な二重複相組織は形成されていなかったが、1280℃で熱処理を行うと二重複相組織が形成した。他方、共析温度以下の975℃で熱処理を行うと、Ni3AlとNi3Vからなラメラ組織が形成されることが明らかとなった。また、減圧プラズマ溶射によって作製したNi3(Si,Ti)基合金皮膜を調査したところ、溶射ままの状態で皮膜はL12構造を有することが分かり、金属間化合物合金を用いた表面硬化コーティング作製への足掛かりを築いた。
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