TRIP型複合組織鋼を用いて,残留オーステナイトの有効利用による最大のTRIP効果について検討した.温度とひずみ速度を大きく変化させた引張試験,常温での引張試験中のその場中性子回折実験を行い,加工誘起変態挙動と各相の寄与について議論した.本実験では,これまでに定量的な議論が難しかった加工誘起マルテンサイト相の結果を初めて整理した.また,引張試験とは異なる様式での加工誘起変態挙動を調査するために,荷重一定クリープ試験を行い,引張試験よりも加工誘起変態しやすいことを示した.基礎データを元に,常温の引張試験結果と比べて1.5倍の均一伸びが得られる条件を示し,その時の加工誘起変態挙動を明らかにした.
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