本年度は、鉛を含まない金属2種以上からなるビスマス(Bi)系ペロブスカイト材料として、カチオンに銀(Ag)とBiを用いるオール無機組成のAgBi2I7 ならびにAg2BiI5を、溶液法によって製膜し光物性と光電変換特性を評価した。両者とも製膜中に副生物(不純物)としてヨウ化Bi(BiI3)が微量に混入する問題があったが、このBiI3の混在量を意図的に制御してペロブスカイト結晶のpassivationに利用することによって、Ag-Bi系のペロブスカイト材料の光電変換特性を向上させることができることを見出した。一方Ag2BiI5は光電変換物性が低く機能しないと判断し、AgBi2I7結晶中に生成する量を抑制した。発電層にAgBi2I7を用い正孔輸送層にはドーパントフリーの高分子材料(P3HT)を用いて作製した素子で、Ag-Bi系のペロブスカイトの最高値である2%を超える変換効率が得られた。また、AgBi2I7材料は長期保存で安定であり、P3HTもドーパントを含まず安定であることから、作製した素子は耐久性に優れており水と触れても劣化しないことを確認した。本成果をまとめて原著論文として出版した。また、昨年度に続き、オール無機構造のCs2BiAgBr6の組成のダブルペロブスカイト結晶を溶液法によって合成し、この材料の電子構造とバンド構造を解析し光物性の基礎データを補充した。以上の本研究で扱った無塩組成のペロブスカイト材料の全てについて、物性と光電変換特性をほかのペロブスカイト材料と比較して、特徴をまとめた総説を、アメリカ化学会のChemical Reviews誌に出版した。
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