研究課題/領域番号 |
26289267
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川崎 亮 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50177664)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | カーボンナノチューブ / 複合材料 / 界面反応相 / 均一分散 / 軽量高強度 |
研究実績の概要 |
本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)を、アルミニウム(Al)マトリックス中に一次元的に均一に配向分散させ、しかも高延性を保って伸線して細線化した後に、Al/CNT界面を意図的に制御することによって、有効な荷重伝達による高強度化、かつ良好な密着界面による高電導率化を同時に達成するプロセスを世界に先駆けて示すもので、界面制御法の学術的説明とそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。CNT は極めて高強度(50GPa 以上)であるため、数vol%のCNTの含有量でAl の約4倍の引張強度に加えてAl と同等以上の電気伝導率が期待できる。提案する革新的軽量高強度Al/CNT 線材は、従来の銅電線と置替えることを可能とし、低炭素化社会の実現に必須な輸送機器の軽量化や電力送電ロスの低減に極めて有効であり、また銅資源問題にも大きく貢献することができる。 平成26年度はCNTの酸処理を行い、ナノ欠陥の形成、官能基について詳細に調べ、エタノール中への分散性およびAl粉末との均一分散混合について明らかにする。また、放電プラズマ焼結(SPS)による遷移的液相焼結によってCNT表面のナノ欠陥部にまでAlが侵入した密着界面を持つ緻密な焼結体の作製を試みた。酸処理により官能基で修飾されたCNTは、エタノール中で負に帯電し、Al粉末は正に帯電する。したがって、粒径の揃ったアルミニウム(Al)粉末をエタノールに分散させ、それをCNT分散溶液に加えヘテロ凝集させることで均一混合する事を試みた。CNT欠陥部は容易に溶融Alと反応し、炭化物を形成することが知られている。しかし、Al液相の存在が極めて短時間の場合、炭化物が生成するには至らないことをTEMおよびTEM-EDXを用いて詳細に明らかにした。遷移的液相の発生に対するSPSパルス波形や周波数、焼結温度、焼結時間などのSPS焼結条件を調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HNO3を用いてCNT表面のアモルファスカーボンなどの不純物の除去と表面の清浄化を行い、次に HNO3/H2SO4混酸を用いてCNT表面への官能基(水酸基やカルボキシル基)を形成させ、この時HNO3とH2SO4の混合比率、処理温度、処理時間を変化させ、CNT表面の欠陥の形態および量をTEM観察により明らかにした。X線回折、ラマン分光法によって欠陥量や損傷の程度を半定量的に明らかにし、これらの関係からCNTの特性を維持できる酸処理条件で適量のナノ欠陥を意図的にCNT表面に導入することを試みた。これは、TEMにより確認した。 次にこの混合粉末をSPS焼結した。固相焼結条件においてもAl粒子から局所的にAl液相が、しかも極短時間発生する可能性があり、そのAl液相すなわち遷移的な液相がAl粒子間に浸透すればCNTと直接接触することになる。すなわち、CNT表面のナノ欠陥部にまでAlが侵入した密着界面を持つ緻密な焼結体を作製することを試み、TEMにより詳細に明らかにした。 以上、研究計画に基づいて、ほぼその内容を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度の成果を踏まえ、まず、Al/CNT焼結体を熱間押出し・熱間線引きによりCNTの損傷を抑えて伸線してAlマトリックス中にCNTが均一に極めて良く配向した複合材料を作製し、次に、熱処理によって意図的にCNT/Al界面に適量のナノ炭化物を形成させ、荷重伝達効果を大きくすることで4倍以上の高強度化を試みる。 引張試験を行い荷重ー変位応答を調べ、Al/CNT界面の荷重伝達特性を明らかにする。 非常によく一次元配向しているCNT表面のナノ欠陥部へナノ炭化物(Al4C3)を選択的に形成するための熱処理条件の最適化を行う。これはいわゆる界面制御に相当し、CNTとAlマトリックス間にAl炭化物が形成されたこととなり、単なるCNTとの接触界面でなく炭化物を介して、強固に接合された界面となる。その結果、良好な荷重伝達が可能となると考えられる。TEM 観察によってAl4C3の生成場所、成長結晶面や成長方向などの形成メカニズムを明らかにする。
|