研究実績の概要 |
本年度は,まず,(Zn,Cd)SnP2の成膜に取り組んだ。スパッタリングによりZn-Cd-Sn前駆体を作製し,これをリン化することで成膜を試みた。前駆体に関しては前年度の結果を踏まえて,電解めっきではなく,スパッタリングによって成膜することとした。しかし,装置の都合上,3元同時スパッタリングを行うことが現時点で困難であり,また,これまで使用してきたリン化用の炉の再整備に時間がかかったため,本研究項目は今後の検討課題とした。 一方で,当初の計画にはなかったが,ZnSnP2, CdSnP2のキャリアタイプの違いを利用したpn接合形成に取り組んだ。ZnSnP2,CdSnP2のバルク結晶をフラックス法により作製し,これらをリン蒸気雰囲気下で熱処理を行い,拡散接合させた。その結果,接合面全面ではないものの,一部の領域でZn, Cdの相互拡散が見られ,接合を確認できた。この試料に対して,スパッタリングにより電極を作製し,Cu/p-ZnSnP2/n-CdSnP2/Sn試料を作製した。これを用いて電流-電圧特性を評価したところ,整流作用が確認された。この試料には,電極としてCuおよびSnを用いているが,これらはそれぞれZnSnP2, CdSnP2に対してオーミック電極となることを以前の研究で確認している。したがって,観察された整流作用はZnSnP2/CdSnP2界面がpn接合を形成していることに起因すると結論付けた。さらに,ダイオード特性を解析したところ,再結合電流成分が大きく電流ロスが大きいことがわかった。今後,これをデバイスとして応用するためには,界面構造の最適化が必要であると考えられる。
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