研究課題/領域番号 |
26289280
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市坪 哲 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40324826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蓄電池 / ポストリチウム / 多価金属 / 二塩 / 二液 / 塩析分離 |
研究実績の概要 |
本申請研究では,ポストリチウムイオン電池の開発という位置づけで,マグネシウムなどの多価金属を負極に用いた二塩蓄電池という全く新しい蓄電池の概念を提案する.ここで提案する二塩蓄電池,二液蓄電池に共通する概念は,二種類の金属カチオンをキャリアとして働かせることにある.二塩蓄電池においては,リチウム電池などで既に確立されている正極と多価金属を組み合わせて新型の電池系を提案し,二液蓄電池においては同様の機構を用いて電解液の二相分離を用いた電池を考案する.これらのメリットは,本提案が成功すれば多くの組み合わせで多価金属負極を有する電池系が確立することが可能になることである.
1.二塩蓄電池系においては,グリニャール試薬(フェニルマグネシウムクロリド・テトラヒドロフラン溶液)に四フッ化リチウムを溶解させた二塩系溶液に,マグネシウム金属負極とコバルト酸リチウムを正極とする電池系を構築した場合,テトラヒドロフランの酸化端より正極の還元電位の方が高いため,溶媒の酸化分解が起こり,電池系としては作動困難であったが,正極としてオリビン型リン酸鉄リチウムを用いたところ,電池系として作動することがわかった.しかし,テトラヒドロフランの酸化端と正極の還元電位が同等程度であるためサイクル特性に問題がある.
2.二液電池については,まずは電解液の作製を試みるため,テトラヒドロフランと水溶液の二液を用いた.そもそもこれらの溶液は完全混和の系であるが,塩を溶解させることにより,塩析分離させることができると考えられる.混和液の二液分離がどのような条件で起こるかについて,種々の塩の組み合わせを用いて定量的に検討した.実際に,銅塩は硫酸銅とし,マグネシウム塩としては,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムを,また塩化ナトリウムや塩化カリウムも塩析分離に使用可能かを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二塩蓄電池系においては,研究計画においてダニエル型(ハイブリッド型)を提案しており,その観点からは,電解液の電位窓の問題さえクリアされるならば,概ね電池系としては作動することが明らかとなっている. 二液電池系においては,塩析分離により二液分離できることは明確になっているが,有機溶媒側の金属カチオン濃度が低いという問題が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
二塩蓄電池系においては,電位窓を広い溶媒をもつグライム系電解液を採用することを試みる. 二液電池系においては,有機溶媒側に金属カチオン濃度が非常に低いということが問題であるので,この濃度を増やすような検討を行う.溶媒抽出法における抽出材の考え方などを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品関連(電解液の購入,試薬や試料作製費用など)に関して極めて効率的な利用を心掛けたため.具体的には,なるべく廃棄せずに利用を繰り返すなどして,消耗品の購入量を減らした.
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次年度使用額の使用計画 |
種々の電解液の購入や装置の改良などに充てる予定.
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