研究課題/領域番号 |
26289284
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
徳山 英昭 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10363029)
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研究分担者 |
寺田 昭彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30434327)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 化学工学 / 反応・分離工学 / 酵素 / 微生物 / 高分子合成 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規なゲルの作製法であるサスペンションゲル化法を確立し、この手法により作製される多孔質高分子ゲルの独立した孔(μmオーダー)に生体触媒(微生物および酵素)を包括固定した微生物固定化ゲルおよび酵素固定化ゲルを創製する。エネルギー・環境分野での反応(バイオ燃料の製造、排水処理など)を例に高性能な生体触媒反応プロセスを構築する。 平成26年度は、サスペンションゲル化法を確立し多孔質高分子ゲルの作製に成功した。具体的には、まず、静電微粒化法を用いてアルギン酸カルシウムゲルマイクロカプセル(粒子径100μm程度)を作製した。次に、モノマー、架橋剤、およびマイクロカプセルを含むサスペンション(懸濁液)に開始剤水溶液を投入してフリーラジカル重合を行い、複合ゲル(分散したマイクロカプセルを内包した高分子ゲル)を作製した。最後に、ゲル内のマイクロカプセルを化学処理により崩壊(ゾル化)させて、多孔質ゲルを作製した。顕微鏡法によりゲル内部の多孔質構造を確認した。さらに、酵素または微生物を内包させたマイクロカプセルを用いることで微生物固定化ゲルおよび酵素固定化ゲルの作製に成功した。 また、高分子の機能化を検討した。油性媒体中で酵素反応を行う場合、一般に酵素は変性や凝集を生じてその活性が低下する。これを克服する材料として、疎水性モノマーと親水性モノマーの共重合ゲルを担体に用いた酵素固定化ゲルを開発した。バイオ燃料の製造を模擬した実験系である酵素リパーゼを用いたオレイン酸のエステル化反応において、当該ゲルが高性能であることを実証した。共重合ゲルの疎水部が油溶性基質の拡散を促し、親水部が酵素に適度な水環境を提供したためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究の目的は、①サスペンションゲル化法による生体触媒固定化多孔質ゲルの作製と特性評価、および②固定化生体触媒の反応特性の評価だった。①については、サスペンションゲル化法による多孔質ゲルの作製技術を確立し論文発表した。生体触媒固定化多孔質ゲルの作製にも成功した。②については、固定化酵素反応および固定化微生物反応を現在進行中で取り組んでいる。また、平成27年度以降に掲げていた目的である高分子の機能化に取り組んだ。具体的には、疎水性モノマーと親水性モノマーの共重合ゲルを開発し、当該ゲルへの固定化酵素が油性媒体中での反応に対して高性能であることを明らかとし論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、当初の計画通り、酵素固定化ゲルおよび微生物固定化ゲルの反応特性を評価し、反応メカニズムを解明する。モデル反応は、酵素ウレアーゼを用いた尿素の加水分解反応およびアンモニア酸化細菌を用いたアンモニアの酸化(硝化)とする。回分反応実験の反応速度解析、ゲル相を通過する物質の拡散透過性、および固定化酵素および固定化微生物の反応活性を明らかにして、当該ゲルにおける反応メカニズムを解明する。反応系ごとに反応速度の向上を達成する高分子材料開発を行う。例えば、コンタクトレンズをヒントに、シリコーン系のポリマーを配合した高分子ゲルによる酸素透過性の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
相見積による業者の選定や格安航空券の購入により、物品費や旅費を節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、ゲル相を通過する物質の拡散透過性を評価するための膜透過実験装置を作製するために必要な機材や機器を購入する。
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