撹拌槽において、小型翼を用いて降伏応力を有するスラリー系流体を撹拌するとき、翼廻りにのみ流動が生じ、翼から離れた領域では、静止状態となる淀み領域が発生し、流動・混合不良の状態となる。槽底部から通気をすることにより、この状態を改善する操作を検討し、一昨年度は、電解質溶液をトレーサとしたサンプリング手法により、翼回転数や通気量等の操作条件と混合促進の関係を定量的に検討した。また昨年度は、電気抵抗方式トモグラフィー計測法を用いて、同系における気泡の通過経路につき混合促進メカニズムの観点から検討を行った。 本年度は、研究の方向性を少し変えて、撹拌槽内における遷移域から層流場までの流動状態につき、PIV(Particle Image Velocimetry)とCFD(Computational Fluid Dynamics)を用いての計測ならびに解析を行った。両手法による半径方向速度の結果を照合したり、動力値の両結果ならびに既存の相関式から算定した結果と照合したりして、両手法の信頼性・妥当性を検証した。流動状態に関しては、層流から遷移域に移るに従い、流体の吐出が、羽前面から背面にシフトすることを明らかにした。遷移域においてもCFDにより動力値は、既存の相関式の値を良く再現するできることを明らかにした。一方、PIVの結果は。翼先端から離れた位置での吐出流量が算出不可となるため、実測値と比較して、過大な値となった。 これらのことは、今後、スラリー流体のレオロジー特性である非ュートン塑性流体を流動解析していく上での素地となるものであり、その前段階を整えることができた。
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