研究課題/領域番号 |
26289287
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田門 肇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111933)
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研究分担者 |
鈴木 哲夫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50243043)
佐野 紀彰 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70295749)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一方向凍結 / 多孔質繊維 / テンプレート合成 / ゾル‐ゲル法 / 多孔構造制御 |
研究実績の概要 |
氷晶テンプレート法を用いて優れたナノ細孔特性を有するチタニアクライオゲル繊維(TCF)と種々のチタン含有率のチタニア‐シリカクライオゲル繊維(TSCF)を作製することに成功した。 作製TCFは直径が約10~30μmで,長さが約数cmであり,可視光を透過する透明な繊維である。また,TCFは無数のナノ粒子によって構成されているため,高表面積(市販光触媒 P-25の約10倍)に加えて大きなメソ孔容積を有している。また,凍結乾燥したTCFは未焼成の状態でもアナターゼを含有しており,焼成温度を高くするとX線回折によって検出されるアナターゼのピーク強度が増加した。TCFはサラダ油の光触媒分解反応において市販品のP-25と比較して非常に高い光触媒能を示したが,これは主にTCFの優れたナノ細孔特性に由来する。しかも,TCFは繊維状であるため,TCFをカラムに充填したTCF充填カラムはUV透過性に優れた高性能な光触媒分解カラムとして使用できることがわかった。 TCFと同様のモルフォロジーをもつTSCFを作製することができ,TSCFの光触媒特性をTCFや市販品のP25と比較した。また,凍結条件の調節によるTSCF,TCFの繊維径の制御についても検討した。さらに,サラダ油を用いた光触媒性能評価実験から,チタン原子が高分散したTSCFは純チタニアによって構成されるTCFとほぼ同様の高い光触媒能を示すことがわかった。 以上の結果から,本研究で作製したTCFとTSCFは,開発目標(繊維径:10~30μm,アスペクト比:1000以上,高光触媒能,BET表面積:300m2/g以上,メソ細孔容積:0.2cc/g以上)を達成しており,高効率な繊維状光触媒として様々な応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書のクライオゲル繊維の開発数値目標は,繊維径:10~30μm,アスペクト比:1000以上,高光触媒能,BET表面積:300m2/g以上,メソ細孔容積:0.2cc/g以上である。研究成果の概要に述べたように,氷晶テンプレート法を用いて開発目標を満たすチタニアクライオゲル繊維(TCF)と種々のチタン含有率のチタニア-シリカクライオゲル繊維(TSCF)を作製することに成功した。 交付申請書の研究計画で27年度に実施予定のゼオライト繊維の作製に関して,陽イオン交換樹脂を用いたケイ酸ナトリウムのゾル‐ゲル重合,一方向凍結,凍結乾燥によってゼオライト繊維前駆体であるクライオゲル繊維を作製した。次に,構造規定剤を用いて水蒸気雰囲気で前駆体を結晶化し,シリカライト繊維に作製に成功している。平成27年度は,アルミニウム源の選定,水蒸気結晶化条件の検討により,ゼオライト繊維の開発目標を達成できる見通しが得られた。したがって,当初の計画以上に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,当初計画通り,氷晶成長を利用するテンプレート合成によってゼオライト繊維,セラミックス繊維を作製し,モルフォロジーと細孔構造の階層制御に関して実験的検討を加える。 (1)ゼオライト繊維の作製 陽イオン交換樹脂を用いたケイ酸ナトリウムのゾル‐ゲル重合,一方向凍結,凍結乾燥によってゼオライト繊維前駆体であるクライオゲル繊維を作製する。構造規定剤(SDA)を用いて水蒸気雰囲気で前駆体を結晶化する。シリカ-アルミナ源,SDAの種類,一方向凍結条件に詳細な検討を加えて開発目標(繊維径:10~30μm,アスペクト比:1000以上,結晶化度:60%以上,BET表面積:300m2/g以上,ミクロ細孔容積:0.2cc/g以上)を達成する。(繊維の作製とモルフォロジー評価:田門担当,細孔特性評価:佐野担当,結晶構造解析:鈴木担当) (2) セラミックス繊維の作製 バインダーとして有機ゲルやポリビニルピロリドン(PVP)を含有したt‐ブタノール(TBA)にアルミナ微粒子,リン酸カルシウム系セラミックス(ヒドロキシアパタイト(HAP)あるいはリン酸三カルシウム(TCP))を分散させてスラリーを調製する。スラリーを一定温度の冷媒中に垂直に一定速度で挿入することにより,試料内部にテンプレートとなる柱状結晶を成長させる。次に凍結乾燥によって前駆体繊維を作製する。空気雰囲気下で前駆体を焼成し, バインダーを燃焼によって除去するとともに微粒子を焼結させ,セラミックス繊維を作製する。焼成温度,焼成時間,昇温速度,焼成過程での結晶化に関して詳細に検討し,開発目標(繊維径:200μm以下,アスペクト比:1000以上,細孔径:100~1000nm,空隙率:60%以上)を達成する。(繊維の作製とモルフォロジー評価:田門担当,細孔特性評価:佐野担当,結晶構造解析:鈴木担当)
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