研究課題/領域番号 |
26289290
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長嶺 信輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30335583)
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研究分担者 |
大嶋 正裕 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60185254)
引間 悠太 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50721362)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボン / ナノファイバー / 電気二重層キャパシタ / 細孔構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、安価な水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)を原料とした、階層的細孔構造を有するカーボン材料のクリーンな作製法の開発を行っている。平成26年度は、PVAと炭化促進剤であるリン酸二アンモニウム(DAP)、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の混合水溶液を出発原料とし、静電紡糸法、炭化によりカーボンナノファイバーを作製した。不融化および炭化工程においてDAPとSDSの熱分解により生成する塩粒子を鋳型として内部に100 nm径の球状の細孔を有するカーボンナノファイバーが得られることを見出した。SDS濃度の増加に伴いナノファイバー径が増大した。また、SDS濃度の増加に伴いファイバー内部の塩粒子に由来する細孔容積が増大したが、一方で比表面積が低下するという結果が得られた。カーボンナノファイバーの細孔構造が電気二重層キャパシタ(EDLC)における電極内のイオン拡散に効果的であると考え、EDLC電極としての性能を定電流充放電試験により評価した。カーボンナノファイバーの静電容量は100 F/g程度であり、比表面積と正の相関を示した。内部抵抗はSDS濃度の増加に伴い減少する傾向が見られたが、その影響はあまり顕著ではなかった。SDS濃度の増加による細孔容積の増大の効果が、ファイバー径の増大による負の効果により打ち消されたものと考えられる。今後は細孔の形状の制御、ファイバー径と細孔容積の独立な制御などについて研究を進める予定である。これらの研究成果は、3rd International Conference on Electrospinning,International Symposium on Fiber Science and Technology 2014などの国際会議で発表した他、現在学術雑誌に論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はカーボン多孔質膜及びナノファイバーの作製を目標としていた。多孔質膜については検討が遅れているが、多孔質カーボンナノファイバーの作製については成果が上がっており、次年度以降の目標であった電気二重層キャパシタ電極への応用について検討を開始することができている。以上を鑑みて、当初予定と進展の順序は変わっているが、概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現段階における問題点として、ファイバー内に形成した細孔が球状であり、細孔の連通性が低いことが挙げられる。これは鋳型となった塩粒子の形状によるものであり、紡糸液の組成の調整によりファイバー内部に針状粒子を生成させ、連続孔の形成を試みる。また、PVA、水溶性高分子、リン酸塩の混合水溶液の静電紡糸により、ファイバー内にPVAと高分子の相分離に由来する連続的な細孔構造を形成させる。水溶性高分子としては、容易に入手可能なポリビニルピロリドン(PVP)を候補とする。ナノファイバー作製と並行して溶液の相図の作成、および塗布、乾燥による多孔質膜作製を行い、乾燥による相分離挙動について考察する。また、カーボンナノファイバーを格子状に配列する技術の開発を開始する。格子状配列により、ファイバー間の空隙のサイズの均一性、及び膜内のファイバーの充填密度が向上し、イオンの拡散や体積あたりの表面積の向上による電極の高性能化が見込める。更に、作製したカーボンナノファイバーのEDLC電極としての性能をサイクリックボルタンメトリー測定、定電流充放電試験により評価する。これらの実験により、細孔構造(比表面積、細孔径分布、空隙率)と電極性能の因果関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗度合いを考慮して、多孔質カーボン材料の作製に用いる予定であった比較的高額な高分子試薬の購入を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の予算と合わせ、前年度検討予定だったカーボン材料作製法に用いる高分子試薬の購入に充てる。
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