マイクロ流路内の非相溶流体内で見られる核発生挙動から,ほぼ均相核生成で生じていることが,核生成速度解析からも明らかとなり,液滴内の晶析挙動からは,核生成速度に関する様々なパラメーターも推測できることが明らかとなった。特にリゾチームの晶析挙動がTwo-Step modelに適応できることが明らかとなり,リゾチーム固有のパラメーターは既報のものと若干異なる傾向を示すことも分かった。この違いは,従来技術で観察される核発生挙動と比較して自然な状態での均相核生成を観察できていることが原因だと思われ,今後は論文投稿や国際学会発表を通じて晶析の専門家に本技術の有用性を理解してもらうことが重要だと考えている。 また,マイクロ流路内での乳化重合においても,スラグ流を用いて閉塞を抑制するだけでなく,異相界面間での物質移動の促進から,重合成長速度の向上が見出され,高分子重合プロセスのフロー型反応へ大きな期待を示すことが改めて確認できた。これまで長年に渡って高分子重合で用いられてきた回分型反応と比較して,短時間で高重合度の高分子を合成できる点で,製造技術としての優位性を有すると期待される。 さらに,液液界面といったソフト界面近傍での金属還元における核生成にも,本研究で得られた成果が反映できることが分かり,セグメント空間のみならず,濃度変化の少ない局所領域においても核生成挙動において有益な知見が得られると期待できた。そのほか,マイクロ流路内の溶媒拡散による貧溶媒液滴の核発生は,異相界面付近から合一を促進して最終的に単核コアとなる現象を引き起こし,ジェット流内部で同現象を引き起こすことで微細繊維内部に中空構造を形成できることも分かった。マイクロ流路内の均一な反応場を利用することで,単一ノズルから形成されたジェット流というセグメント空間内で中空構造を誘発し,繊維の内部構造形成によって機能を付与できた。
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