研究課題/領域番号 |
26289292
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
寺坂 宏一 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00245606)
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研究分担者 |
藤岡 沙都子 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (50571361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気泡 / ファインバブル / ウルトラファインバブル / マイクロバブル / ソノケミストリー / ガス過飽和 |
研究実績の概要 |
1.ウルトラファインバブル水への超音波照射によるラジカル生成 ウルトラファインバブルの圧壊に伴うラジカル発生によるソノケミカル反応の促進効果を検証し、化学反応プロセスへの適用を検討した。反応器にモデル有機物として仕込んだメチレンブルー水溶液中に超音波振動を付与した。発生したラジカル量はKI法を用いて吸光度変化から定量化した。ウルトラファインバブル無添加の水溶液でにソノケミカル反応にくらべてウルトラファインバブル添加の水溶液中ではソノケミカル反応の促進によりメチレンブルーはより高速に分解できた。これは有害廃棄物処理をバブル添加のみの改良で迅速化できるプロセスの可能性を示唆しておりその重要性は非常に高い。 2.ウルトラファインバブル水からのマイクロバブル発生の可視化 過飽和にガスが溶存した水に刺激を与えると気泡が析出する。一方ウルトラファインバブルは水中で溶解せずに準安定的に長時間存在するが、可視光の回折限界を超えるため水中では無色透明である。ガス過飽和水またはウルトラファインバブル水に超音波をパルス照射し、その後の状態を高速度ビデオで撮影して観察を行った。超音波刺激付与後に発生した観測可能なマイクロバブルの個数は、ウルトラファインバブル水よりもガス過飽和水の方が多く、刺激付与後のウルトラファインバブル水中にはより多くのウルトラファインバブルが存在していた。これは水中の溶存ガスを原料としてマイクロバブルが発生する際に、多数のウルトラファインバブルが存在するとそれらが核となって一様に成長するかあるいは新たにウルトラファインバブルが発生したため、気泡の膨張は小さく、観測可能なサイズまでに達しない。一方、ガス過飽和水ではわずかな個数の核に溶存ガスが供給されて膨張するため、可視できるマイクロバブルは増加した。これはウルトラファインバブルの数密度制御技術に寄与する重大な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りの成果が得られているのは、当初の交付申請での研究計画が極めて妥当で十分に洗練されていることに加え、研究代表者および研究分担者の研究能力ならびにマネージメント能力が優れているためと自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の予定通り、ウルトラファインバブルを液相トレーサーとして応用するために必要な物性計測ならびに評価を行う予定である。ウルトラファインバブルは液中で浮上せず液相の運動に同伴して移動する。また水中での存在可能時間は数か月以上に及ぶこともある。可視光は回折・散乱しないがが短波長光では散乱が起こるため緑レーザーを光源にすれば液の運動に同伴するウルトラファインバブルを観測や撮影でき、液速度をトレースできる。一方マイクロバブルは、非常に遅い浮上速度をもつが急速に内包ガスを液中に溶解させる性質を持つ。そこで酸素マイクロバブルを水中に導入して急速溶解させると、局所的な酸素高濃度スポットを作成できる。溶存酸素を呈色させれば液の流線の軌跡を観察できる。 これらの技術開発を実現させるために、研究協力者で気液混相流の可視化技術の世界的権威であるドイツ・ハンブルク工科大学のSchlueter教授との国際共同研究を実施する。そのため研究代表者はハンブルク工科大学に数か月間滞在して実験ならびに討論を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に購入したい機器や消耗品の経費としては少額すぎて使用ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費の一部として使用を計画している。
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