研究課題/領域番号 |
26289299
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 研一 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (60324000)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 触媒 / バイオマス / 有機合成 / 水素化 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
サステナブルな炭素源であるCO2やバイオマスを原料とする還元的な化学品・燃料合成を目的とした触媒研究が注目されている.我々は担持Pt触媒上でのCO2やカルボン酸類の還元的官能基変換において,還元相が金属と強く相互作用するLewis酸性酸化物を担体に用いた場合に特異的な触媒特性を示すことを見いだした. 1. 脂肪酸の水素化: Pt/Nb2O5が種々の脂肪酸の脱酸素化にも有効であることを見出した.酢酸吸着IRと構造解析より,Pt表面の一部にNb酸化物が被覆(部分的SMSI化)し,PtとNb酸化物の界面が増大した状態が高活性の要因であると結論した.Ptは水素解離吸着に,Nb酸化物上のLewis酸点はカルボニル基の活性化を担う. 2.ピロリドン類の合成: Pt-MoOx/TiO2はレブリン酸の還元的アミノ化によるピロリドン類の合成に高収率を示した.活性及びPt, Moの酸化状態(XPS)に対する還元温度依存性を検討したところ,金属PtとMo4+種が共存した場合(300℃還元体)が最も高活性であった. 3.CO2の資源化: Pt-MoOx/TiO2はCO2,H2共存下での2級アミンのメチル化にも有効であり,脂肪族アミンやアニリン類を含む様々な2級アミンを高収率で3級アミンに変換した.本系は中性条件で触媒的に本反応を進行させた初めての例である.この反応でも活性に対する担体効果は顕著であり,Lewis酸性担体が有効であった. 4.卑金属触媒への展開:Ni-MoOx/Cがレブリン酸の水素化によるγ-バレロラクトン合成に高活性を示すことを見出した.本触媒のTON(4950)は既報のベースメタル触媒のTONより2桁高い.金属NiとMo4+種の両方が必須要素である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時における本研究の前半の目標は、再生可能炭素資源(CO2、カルボン酸)からの化学品合成に対して白金族錯体触媒を上回る特性を示す新規固体触媒を開発することであった。今年度、CO2やカルボン酸からの有用化学品合成に対して、白金族錯体を上回る固体触媒を4種の系で開発(論文発表)することができた。さらに、貴金族フリーの固体触媒の開発に関しても、1件の論文発表ができた。よって、1年で前半の目標を達成したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画に従い、以下の2項目を検討する。 1.反応系の拡張:アミドやスルホキシド等の難還元性有機化合物を水素分子により還元し、有用化合物に変換する触媒反応に対して、既存の有機金属触媒を上回る性能を示す固体触媒を開発する。 2.性能制御因子の解明:各触媒の構造、電子状態を決定し、活性・選択性との相関より触媒性能制御因子を決定する。In-situ分光と速度論解析より触媒作用機構を決定し、素過程における触媒活性と表面構造、電子状態の関係を明らかにする。上記検討より、触媒設計指針を分子論的観点から明確化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に比べて、ヘリウムボンベ等の消耗品の価格・使用量、及び汎用試薬の使用量が低かったため、物品費が計画より低額となった。消耗品使用量は、厳密な予測が困難であるため、次年度の物品費として使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
ヘリウムボンベや試薬等の高額消耗品購入に利用する。
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