研究課題/領域番号 |
26289300
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中川 紳好 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70217678)
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研究分担者 |
石飛 宏和 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00708406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 触媒・化学プロセス / 燃料電池 / 化学工学 |
研究実績の概要 |
直接メタノール燃料電池の主な課題は、電極反応の遅さとそのために使用される貴金属触媒量のおおさである。我々はTiO2ナノ粒子を埋め込んだカーボンナノファイバ(TECNF)を貴金属触媒の担体に用いることで市販触媒にくらべ3~4倍高い活性が得られることを報告した。 活性増大要因を解明する目的で、TiO2粒子径とその分散性が活性におよぼす影響を調べた。前駆体溶液としてチタニウムアルコキシドを用いてTECNFを調整し、従来の35nmに比べより小さい23nm径のTiO2粒子を得た。また、ナノファイバー表面は非常に平滑になり、従来に比べより高い分散状態で埋め込まれていることを確認した。これを担体にしたPtRu触媒のメタノール酸化活性は最適条件で、従来より約10%高い活性を示した。Ti/Cの最適値は従来よりも大きい値にシフトした。より高分散したことによって、より多量のTiO2をナノファイバー中に含有できるようになり、その分活性も上昇したものと考えられる。 担体中のTiO2が活性におよぼす影響を調べる目的で、購入した化学吸着測定装置を用いて、本触媒と市販触媒について水素およびCOのパルス吸着、吸着COおよび吸着メタノールの昇温脱離実験を行い、比較した。担体が炭素とTiO2の複合体では何れの吸着物の場合も脱離ピークがより低温側に現れ、TiO2と炭素の複合体がもつ担体効果を示唆した。 本触媒と市販触媒を用いたメタノール燃料電池を作製し、発電特性と触媒層構造を比較した。本触媒を用いた電池では市販触媒の場合に比べおよそ3倍大きい出力が得られた。触媒層を観察した結果、本触媒を用いた触媒層は比較的空隙が大きく、空隙率は市販触媒の触媒層の0.3に比べ0.5~0.6程度と大きいことが分かった。ナノファイバーの触媒層では空隙が大きく、物質移動特性に優れた触媒層であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた1)「活性増大要因の解明」では、チタニアの分散性の影響について結果を得ることができ、2)「ナノファイバー触媒の触媒層の構築」では、本触媒を用いた触媒層構造の特徴について結果を得ることができた。また触媒の表面キャラクタリゼーションの検討もおよそ計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)「活性増大要因の解明」では、カーボンの構造および組成について着目し検討を進める。具体的にはカーボンナノファイバーの比表面積、細孔構造と活性との関係、そして炭素含有窒素が活性におよぼす影響を調査する。具体的には、前者については吸着法によりBET比表面積等を測定して評価する。後者についてはTECNFにアンモニア処理など で表面の窒素含有量を変化させ、その影響を調べる。 2)「ナノファイバー触媒の触媒層の構築」では、昨年度の結果を反映させ、引き続き調査検討を進める。 3)「高出力メタノール燃料電池の実証試験」では、PtRu/TECNFの担持量を調査因子として出力増大をはかる。 4)カーボンナノファイバー への新たなTiO2微粒子修飾法やTiO2以外の酸化物微粒子の利用を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品(化学吸着装置)の購入に際し、当初の予定額を大幅に下回る価格で希望機種を購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度およびH28年度の消耗品及び旅費の一部として有効に使用する予定である。
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