研究課題/領域番号 |
26289303
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
満留 敬人 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00437360)
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研究分担者 |
金田 清臣 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 特任教授 (90029554)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 触媒 / 無機酸化物 / 環境調和 / 有機合成 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、金属ナノ粒子の新規触媒作用の発現、担体と金属ナノ粒子のヘテロ接合界面における触媒作用発現因子の解明、及びそれらの知見を基にした革新的触媒の開発を目的としている。 金ナノ粒子をセリアナノ粒子で包み込んだコア-シェル型ナノ構造触媒の合成に成功した(J. Am. Chem. Soc., 137, 13452-13455 (2015))。本触媒では、金ナノ粒子とセリアナノ粒子との金属-担体との接合界面において協奏的触媒作用が発現することを明らかにした。また、パラジウムナノ粒子を銀ナノ粒子で包み込んだコア-シェル型ナノ構造体の合成し、本構造体の構造解析に成功した。また、本触媒はアルキンの部分水素化反応に高活性を示し、種々の末端及び内部アルキンを高選択的に対応するアルケンへと変換できることを見出した(ACS Catal., 6, 666-670 (2016))。これらの触媒は反応後ろ過により容易に反応溶液から分離・回収が可能であり、反応後の触媒は活性・選択性の低下なく再使用が可能である。さらに、金ナノ粒子は酸素雰囲気下においてヒドロシランを強く活性化できることを見出し、ヒドロシランと水との脱水素カップリング反応によるシラノール合成において世界で最も高い活性を示すことを見出した(Chem. Lett., 44, 1062-1064 (2015))。現在、この見出した金ナノ粒子と酸素分子との特異な相互作用に基づく触媒駆動原理を理論計算により明らかしようと取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
サイズ制御された様々な担持型金属ナノ粒子触媒及びコア-シェル型金属ナノ粒子触媒の調製に成功しており、研究は順調に進んでいる。特にパラジウムナノ粒子を銀ナノ粒子で包み込んだコア-シェル型ナノ構造体の合成し、ナノ構造体イメージング班との共同研究により本構造体のイメージングに成功している(ACS Catal., 6, 666-670 (2016))。また、金ナノ粒子と酸素分子の相互作用から生まれる新しい触媒効果を見出し、その触媒駆動原理を第一原理・電子状態理論班との共同研究により明らかにしつつある。 無機酸化物上に固定化した金属ナノ粒子の接合界面における協奏的な触媒作用の発現を検討していく中で、無機酸化物担体をナノ化した酸化物ナノ粒子へと展開し、酸化物ナノ粒子と金属ナノ粒子との協奏的触媒作用を検討したところ、難還元性官能基であるアミドからアミンへと温和な条件で還元することのできる触媒作用が発現することを発見した。本反応は、今後製薬産業において最も波及効果の高い、達成すべき12の課題の一つである。開発した触媒は本課題を初めて達成した触媒であり、今後ナノ触媒構造のイメージングを行っていく予定である。 次世代の水素エネルギー社会の実現に向けて、金属ナノ粒子触媒とシリコーン廃棄物から水素を作り出す新しい触媒的水素供給法の開発に成功している。本手法は「大気中、加熱なしで、必要な時に、必要なだけの水素をその場で作り出す」水素発生技術であり、水素を安全に利用できるものである。本手法は現在市販されているポータブル燃料電池の問題点である水素発生剤の爆発の危険性や水素発生の制御が困難と言った問題点を克服しており、次世代型の革新的水素発生システムとなり得る。
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今後の研究の推進方策 |
環境低負荷型反応を進行させる革新的触媒の創成についてを引き続き研究を行っていく。現在、夢反応の一つである「難還元性官能基であるアミドからアミンへと環境低負荷型還元反応」を進行させる革新的触媒作用を見出しているため、そのナノ触媒解析と触媒活性発現因子の解明に取り組む。また、次世代型エネルギーキャリアシステムとして、シリコーン廃棄物から水素を作り出す新しい金属ナノ粒子触媒の開発にも成功しているため、さらなる触媒調製法の開発と同時にその触媒駆動原理の解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題を遂行していく中で、夢反応と言われる「低温条件下でのアミドの還元反応」を進行させることに成功した。次年度、その触媒構造を大型分析機器であるSPring-8にて放射光を使い解析することが決まったため、それに関わる出張費や測定試料調製コストを次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
大型分析機器を使った触媒の構造解析に関わる関わる出張費や測定試料調製コストに使用する。
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