研究課題/領域番号 |
26289304
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹中 壮 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10302936)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェン / 金属酸化物 / ナノシート / 触媒 |
研究実績の概要 |
2次元化合物である金属酸化物ナノシートは,極めて薄い厚さ,数マイクロメートルにも達する大きさ,特異な表面が露出するなどの特異的な特徴を有しており,触媒,電極材料,センサーなどへの応用が進められている.金属酸化物ナノシートは,層状化合物の剥離により調製されるのが一般的である.この方法で結晶性の高い金属酸化物ナノシートが調製できるものの,出発物質として層状化合物の利用が必須であるため,剥離法で調製できる金属酸化物ナノシートの種類は限定される.そこで本研究では,グラフェンをテンプレートに利用して金属酸化物ナノシートの調製を試みた.無水の有機溶媒中に乾燥させた酸化グラフェンを分散させ,ここに金属アルコキシドを添加し,オートクレーブ中で180℃に加熱することで,グラフェン上に金属酸化物ナノシートを生成させることに成功した.またここで得られた金属酸化物とグラフェンの複合体を空気中,450℃以上で加熱するとグラフェンが燃焼除去され,金属酸化物ナノシートが生成することが分かった.今年度に行った研究により,グラフェンをテンプレートに利用した方法で酸化チタン,酸化ジルコニウム,酸化ニオブ,酸化タンタル,酸化スズをナノシート化することに成功した.無水溶媒中に金属アルコキシドと酸化グラフェンを分散すると,酸化グラフェン上の含酸素官能基に金属アルコキシドが吸着し,オートクレーブ内での加熱により酸化グラフェンがグラフェンに還元される.その際に生成する水により吸着した金属アルコキシドが加水分解され,グラフェン上に金属酸化物ナノシートが生成したと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に行った研究により,グラフェンをテンプレートに利用して,多くの種類の金属酸化物をナノシート化することができ,本課題で検討している方法が金属酸化物ナノシート調製法として有効であることを実証できたため.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,酸化グラフェンをテンプレートに利用して金属アルコキシドから金属酸化物ナノシートとグラフェンの複合体および金属酸化物ナノシートの調製に成功した.酸化グラフェン上の含酸素官能基に金属アルコキシドが吸着し,これらをオートクレーブ内で加熱する際に酸化グラフェンが還元型グラフェンに還元され,この際に生成する水により吸着した金属アルコキシドが加水分解され,グラフェン上に金属酸化物ナノシートが生成すると考えている.しかしこの生成機構は現段階で推測したものであり,実験的証拠はない.そこで2年目の研究では,グラフェンをテンプレートに利用した金属酸化物ナノシートの生成機構を分光学により明らかにする.また今後,金属酸化物ナノシートを機能性材料に利用するには,複数の金属種から構成される複合金属酸化物ナノシートの調製が望ましい.そこでグラフェンをテンプレートに利用した方法で,複合金属酸化物ナノシートの調製を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度購入を予定していた分析機器を今年度は共同実験施設で使用することができたため,次年度に新たに金属酸化物表面分析機器の購入を考えた.
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次年度使用額の使用計画 |
2年目の早い時期に,実験の進捗に応じて金属酸化物表面分析機器を購入予定
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