研究課題/領域番号 |
26289305
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
宍戸 哲也 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (80294536)
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研究分担者 |
三浦 大樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20633267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 合金ナノ粒子 / ナノ粒子合成 / バイオマス / 希少金属使用量低減 / 脱水素 / 炭素析出 / 選択酸化 |
研究実績の概要 |
1) 組成を制御し直接還元法により調製した担持Pt-Sn合金ナノ粒子触媒を低級アルカン脱水素およびエチルベンゼン脱水素に適用し、その触媒機能を検討した。その結果、Pt3Sn相が脱水素の主な活性種であること、いずれのSn/Pt比においても合金ナノ粒子表面はSnリッチな組成となってること、Sn/Pt比=1以上の領域では,Pt-Sn合金ナノ粒子の表面がSnO2種で一部覆われ、その被覆率はSn/Pt比の増加に伴い増加することを明らかとした.表面SnO2相の形成により活性種が覆われ、その結果、活性が低下することを明らかとした. 2) PtにSnを添加することで炭素析出挙動が大きく変化する原因について検討を行った。Ptのみを担持した場合には,反応の進行に伴いPt上に炭素が析出し,反応時間の経過と共にPtが被覆され活性が急激に低下した.一方,Snをした場合,むしろ単位触媒量あたりの炭素析出量は増加したにもかかわらず,活性は低下しなかった.昇温酸化法による検討から担持Pt-Sn合金触媒上では,Pt-Sn合金ナノ粒子上に生成する炭素種と担体との界面、あるいは担体上に生成する炭素の二種類が存在することを明らかとした。担体上の炭素は、Sn種の存在によって炭素が担体上に移動すると考えられる. 3) 均質に混合した固溶型Pt-Sn合金ナノ粒子の合成をポリオール還元法、液相選択還元析出法により試みた。いずれの方法でも仕込みのSn/Pt比と比較して表面がSnリッチな組成になることが分かった. 4) Niを主成分とするNi-Pt合金ナノ粒子コロイド溶液を液相選択還元析出法により調製し,これをメソポーラスシリカに担持した触媒を調製した.調製した触媒によるグリセロール酸化を検討したところ,1級水酸基が選択的に酸化され、また,逐次的な酸化が比較的抑制されアルデヒドが高い選択性で得られることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,1) Pt-Sn合金ナノ粒子ならびに担持Pt-Sn合金触媒の調製,2) 調製したPt-Sn合金ナノ粒子の構造・電子状態の解明,3) 担持Pt-Sn合金ナノ粒子触媒の脱水素反応に対する触媒作用の検討,4) Ni-Pt合金ナノ粒子および担持Ni-Pt合金ナノ粒子触媒によるグリセロール選択酸化、について検討をすすめた.また,並行して、Ni-Pt合金ナノ粒子および担持Ni-Pt合金ナノ粒子触媒によるグリセロール水素化分解について、ならびに時間分解X線吸収分光測定の予備的な検討をすすめた. 1), 2)については,様々なSn/Pt比についてPt-Sn合金ナノ粒子ならびに担持Pt-Sn合金ナノ粒子触媒の構造・電子状態について系統的に検討し,これまで仕込み組成を前提に大きな結晶を対象として検討されてきたため,あまり議論されてこなかったPt-Sn合金ナノ粒子の構造・電子状態に関する知見を獲得し,あらたな視点を提供することができた. 3)については,調製した担持Pt-Sn合金ナノ粒子触媒の脱水素反応に対する触媒機能と特に興味深い耐コーキング性について検討を進めた.また,PtにSnを添加することで炭素析出挙動が大きく変化する原因について詳細に検討を行い,Snの機能についてモデルを提案した。1),2)とともに今後の触媒設計に重要な指針を与えるものである. 4) については,様々なNi/Pt(主にNi大過剰)について均質に混合したNi-Pt合金ナノ粒子の合成と担持Ni-Pt合金ナノ粒子触媒を調製し,調製した触媒によるグリセロール選択酸化を検討し,一級水酸基の選択酸化へ有効であることを示した. これらの結果は,研究計画に基づき遂行したものであり, 研究目的に合致した有意義な成果も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、Pt-Sn合金ナノ粒子、Ni-Pt合金ナノ粒子を中心に脱水素反応ならびにグリセロール選択酸化に対する活性を評価することでその触媒機能を評価した。静的なキャラクタリゼーション、特にTEM, XRD, XAFS法を中心として合金ナノ粒子の構造・電子状態に着目し研究を進めてきた。今後の研究では、下記1), 5)の項目を中心に合金ナノ粒子の化学についてより理解を深め、高機能な合金ナノ粒子触媒の設計指針を示すことを目標に研究を進める. 1)Pt-Sn合金ナノ粒子のさらなる調製法の最適化、特に表面Sn濃度について出来るだけ仕込みの組成に近い組成を有するナノ粒子を選択的に調製する方法を検討する.得られたPt-Sn合金ナノ粒子の脱水素に対する触媒機能を検討する。また,水素キャリアーの候補として有力なメチルシクロヘキサンの脱水素についても検討を進める。 2)Pt-Sn合金ナノ粒子の構造に基づき量子化学計算を行い、その妥当性とSnの機能について評価する. 3)Ni-Pt合金ナノ粒子についてグリセロール選択酸化に加えて水素化分解についても検討を進める. 4)時間分解測定によるナノ粒子形成過程の解明について検討を進める. 5)これまで予備的な検討をすすめたPd-Au合金ナノ粒子について調製法、得られたPd-Au合金ナノ粒子の構造・電子状態とヒドロシリル化に対する触媒機能の相関を検討する。また,推定構造を基に量子化学計算を行い、PdとAuの合金化の効果について理論的な側面からも検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに執行したが、3月に予定していた出張経費の一部が先方負担になったなど期末に若干の変更があり、変更分が未執行分として残ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
触媒調製用試薬に充当する.
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