研究課題/領域番号 |
26289308
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉野 知子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30409750)
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研究分担者 |
前田 義昌 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30711155)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁性粒子 / 膜タンパク質 / in vitro docking / 細胞内区画 |
研究実績の概要 |
本研究では、標的膜タンパク質と磁性粒子の双方に、ドッキングタンパク質を融合し細胞の異なる区画で発現、さらに細胞破砕によりin vitroでドッキングが進むように設計する。平成27年度では、種々のセルロース分解菌から得られたドックリン・コヘシン相互作用を利用した標的タンパク質の磁性粒子上へのドッキングを行った。ドックリン・コヘシン相互作用の特徴として高い親和性(Kd値 1~0.01 nM)と結合の特異性が挙げられる。粒子上のアンカータンパク質であるMms13にコヘシンを、また標的タンパク質にドックリンを融合し、磁性細菌をホストとして外来タンパク質発現を行った。このとき、標的タンパク質とドックリンの融合タンパク質発現には、テトラサイクリン誘導システムを組み込み、細胞内での標的タンパク質の発現量を調節した。その結果、誘導剤であるアンヒドロテトラサイクリン(ATc)の濃度に応じて、細胞内及び粒子上の標的タンパク質の発現量は増加した。また、低いATc濃度において、磁性粒子上の標的タンパク質量が定常となり、それ以上のATc濃度においては細胞内に標的タンパク質が蓄積していくことが観察された。以上の結果より、細胞内で必要最低限の標的タンパク質を発現させ、磁性粒子上にドッキングするMinimum expression systemの構築が可能となった。本手法は、細胞内発現により細胞毒性を示す膜タンパク質発現において、有効であると考えられる。さらに、2種類のセルロース分解菌由来ドックリン・コヘシンのペアを用いて、2種類の標的タンパク質を近接配置する技術も確立し、磁性粒子上に自在に標的タンパク質を固定化する技術の確立が行えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度までに、当初想定していたZZドメイン・Fc部位の相互作用、およびドックリン・コヘシンの相互作用を利用した、磁性細菌における組み換えタンパク質のドッキングに成功した。また、複数のドックリン・コヘシンのペアを用いることで、複数のタンパク質を近接させて固定化できることも実証している。さらに、発現誘導システムの導入により、細胞内への発現毒性を低減させた膜タンパク質発現系(Minimum expression system)が確立できている。これらの成果により、来年度に予定されている、膜タンパク質や膜タンパク質の構造維持を補助するタンパク質の同時発現を滞りなく開始することが可能となった。以上の事より、本研究はおおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構築したドッキングタンパク質のうち、Clostridium thermocellus由来のドックリン‐コヘシンタンパク質の組み合わせを選択し、膜貫通タンパク質の発現を試みる。膜貫通タンパク質としては、細胞外領域にSS結合を多数有する甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR、膜7回貫通タンパク質)を利用する。ペリプラズム移行シグナル配列の下流にTSHR及びドッケリンタンパク質の遺伝子を融合する。また、Mms13アンカー分子にコヘンシンタンパク質を融合し、粒子上に発現させる。このとき、TSHRの発現にはテトラサイクリン誘導型プロモーターを組み込み、TSHRの発現量をコントロールできるようにする。このようにしてペリプラズム内(酸化的環境)でTSHRの調製を行い、SS結合形成を促進させる。また、従来の発現システムとして、Mms13に直接TSHRを融合した磁性細菌粒子-TSHRの複合体を調製する。本磁性粒子は還元的環境である細胞内で調製されるため、SS結合形成が行われないと考えられる。2つの方法で調製された磁性粒子-TSHR複合体の発現量、および自己抗体結合量を定量化し、IVD法の有効性を実証する。また、IVD法によって調製された膜タンパク質の機能が発揮されない場合は、膜タンパク質を埋包した脂質二重膜を安定化させる膜骨格タンパク質の共発現を検討する。
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