研究課題/領域番号 |
26289315
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井藤 彰 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345915)
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研究分担者 |
清水 一憲 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70402500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医療 / 骨格筋 / ティッシュエンジニアリング / iPS細胞 / マイクロデバイス / 磁性ナノ粒子 / 三次元培養 / 筋分化 |
研究実績の概要 |
本研究では、iPS細胞由来の骨格筋再生医療における「再生治療」と「再生研究」に有用な新規技術基盤を開発する。平成27年度は、申請書の内容に基づいて、以下の研究を行った。 ①再生治療へのアプローチ:前年度作製したレトロウイルスベクターをマウスiPS細胞に導入して、ドキシサイクリン(Dox)の添加によりMyoD発現が誘導可能なiPS細胞のクローニングを行った。iPS細胞への遺伝子導入効率の低さが問題となったが、磁力を用いる遺伝子導入法(マグネトフェクション法)を用いることで、4倍の遺伝子導入効率を達成した。ヒトiPS細胞に関しては、京都大学CiRAと共同研究を開始し、臨床研究「筋ジストロフィ患者由来iPS細胞を用いた人工筋組織の作製と機能評価」が倫理委員会に承認され、開始された。ヒトiPS細胞をDox添加によるMyoD発現によって筋芽細胞へ分化誘導することに成功し、人工筋組織の作製に着手した。 ②再生研究へのアプローチ:モデル薬剤として、エピジェネティック変化を引き起こす低分子薬剤を用いて筋芽細胞を処理して筋分化を誘導し、作製した骨格筋組織の収縮力を測定したところ、トリコスタチンAが最も収縮力増強に有望であることが分かった。また、そのメカニズムとして、フォリスタチン遺伝子発現に着目して調べたところ、フォリスタチンが筋収縮力増強に関与していたことから、有望な薬剤スクリーニングのターゲットであることが分かった。また、分担者の清水は作製した骨格筋組織の収縮力を測定するためのマイクロデバイスの開発に取り組んだ。いくつかのデザインを基に作製したプロトタイプの中から、骨格筋組織のハイスループットスクリーニングに最も有効なデバイスを選定して大量に作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養が難しく困難であったiPS細胞の培養も外部研究者との共同研究によって解決し、研究が順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の実験計画に基づいて、以下の課題を最終年度である平成28年度に行う。 ①再生治療へのアプローチ: iPS細胞から分化誘導した筋芽細胞を用いて、磁力を用いたティッシュエンジニアリング技術によって三次元人工筋組織を作製し、すでに開発済みの収縮力計測法で電気刺激を与えることで骨格筋組織が発生する収縮力を測定することで、収縮力を骨格筋組織の重要な「質」の指標とした分化誘導法の評価を行う。また、筋ジストロフィ患者由来iPS細胞から誘導した筋芽細胞を用いて作製した骨格筋組織の収縮力と、健常者由来iPS細胞から誘導した筋芽細胞の人工筋組織の収縮力を比較する。 ②再生研究へのアプローチ:モデル薬剤としてエピジェネティック変化を引き起こす低分子薬剤の効果を、iPS細胞由来の人工筋組織の収縮力を指標に調べる。また、MEMSデバイスを用いて、磁力を用いたティッシュエンジニアリング技術による微小骨格筋組織を構築し、MEMSデバイスのマイクロピラーの変位とバネ定数から、マイクロ骨格筋組織の収縮力を測定することで、薬剤ハイスループットスクリーニング系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトiPS細胞培養が年度後半にようやく軌道に乗ったところであり、培養液等の消費が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、ヒトiPS細胞を含めた細胞培養を精力的に行っていくことで研究を加速させる。そのために、培養液や培養器材を大量に消費するため、研究費を多く充てる予定である。
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