研究課題/領域番号 |
26289316
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上平 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40202022)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオテクノロジー / 生物・生体工学 / 応用動物 |
研究実績の概要 |
本研究では、安定なニワトリ多能性幹細胞の樹立を実現し、同時に最近の染色体操作技術を用いて、多能性幹細胞によるトランスジェニック鳥類作製技術を開発することを目的としている。これまでに、多能性が知られているニワトリ胚盤葉細胞やES細胞のトランスクリプトーム解析によって、未分化維持に働いていると考えられる遺伝子や生殖系列分化を引き起こすために必要な遺伝子について、大規模シーケンサーとマイクロアレイ解析を用いたトランスクリプトーム解析を行っている。ニワトリ胚盤葉細胞で発現している約37,000の遺伝子の配列情報の取得に成功している。鳥類初期胚細胞で高発現している遺伝子群を同定し、未分化維持に関わる遺伝子のホモログの発現を確認するとともに、鳥類に特有に発現している遺伝子について探索を行い、いくつかの候補遺伝子を抽出するとともに、配列データからこれらの遺伝子を人工全合成により取得した。ニワトリ胚細胞や繊維芽細胞にOct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, Nanog, Lin28といったこれまで報告されているiPS誘導因子遺伝子に加えて、これらの遺伝子を発現ユニットにもつレトロウイルスベクターを作製した。発生段階のニワトリ胚から胚細胞を採取し、iPS誘導因子遺伝子を上記のウイルスベクターで遺伝子導入し、iPS細胞の樹立を行ったところ、アルカリフォスファターゼ陽性コロニーの出現を確認することができた。今後は、継代安定性を評価するとともに、細胞株としての樹立を試みる。また、鳥類幹細胞への染色体編集技術の適用により遺伝子改変鳥類を作出するための予備実験を開始した。CRISPR/Cas9システムを用いてdmrt遺伝子の改変のためのベクターを作製し、ニワトリ繊維芽細胞を用いて同遺伝子の改変が可能であることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、、大規模シーケンサーとマイクロアレイ解析を用いたニワトリ胚盤葉細胞やES細胞のトランスクリプトーム解析から、ニワトリ胚盤葉細胞で発現している約37,000の遺伝子の配列情報の取得に成功している。この中から、未分化維持に関わる遺伝子のホモログの発現を確認するとともに、鳥類に特有に発現している遺伝子について探索・抽出し、配列データからこれらの遺伝子を人工全合成により取得できた。これらの遺伝子を発現ユニットにもつレトロウイルスベクターを作製し、iPS細胞の樹立を試み、アルカリフォスファターゼ陽性コロニーの出現を確認することができている。また、鳥類幹細胞への染色体編集技術の適用として、CRISPR/Cas9システムを用いてdmrt遺伝子の改変のためのベクターを作製し、ニワトリ繊維芽細胞を用いて同遺伝子の改変が可能であることを確認できた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ニワトリ胚盤葉細胞やES細胞のトランスクリプトーム解析から抽出した因子遺伝子を発現ユニットにもつレトロウイルスベクターを用いたiPS細胞の樹立を継代安定性の観点で評価するとともに、細胞株としての樹立を試みる。iPS細胞誘導の際に導入する遺伝子において、因子を1つずつ減らしていくことによって、必要な因子の同定を行う。また、鳥類幹細胞への染色体編集技術の適用により遺伝子改変鳥類を作出するための予備実験として、CRISPR/Cas9システムを用いてdmrt遺伝子の改変のためのベクターが機能することを確認できたので、胚への導入を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において、老朽化に伴う備品購入を予定しており、これに係る必要経費がかさむことが予想されたため、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
バイオハザード対策用キャビネットが老朽化してきており、更新のための経費として使用する。
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