研究実績の概要 |
申請者は、ニワトリ由来の初期化因子(cOct4, cSox2, cKlf4, cc-Myc, cNanog, cNr5a2, cGlis1, cRARα, cRARγ)を用いることでニワトリiPS細胞の樹立を試みてきたが、生殖細胞系列へと伝播可能なニワトリiPS細胞は未だ樹立できていない。そこで、分化全能性が確認されているニワトリ胚盤葉細胞の次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析の結果を元に、未分化細胞において発現量の高かった新たな遺伝子(cSox17, cKlf1, cKlf3, cKlf5, cLin41, cNr6a1, cPRDN14)を抽出し、配列情報を取得した。新規抽出遺伝子の中でも山中ファクターであるSox2およびKlf4のファミリー遺伝子5つ(cSox3, cSox17, cKlf1, cKlf3, cKlf5)に着目し、それぞれ1因子ずつ代替することでニワトリiPS細胞の取得を試みた結果、day 7において複数のAP陽性コロニーが確認できたが、継続して未分化状態を維持して培養できなかった。これは、一時的に初期化細胞が誘導されたものの、未分化状態維持のための外因的環境が整っておらず、分化してしまった可能性が高いと考えられる。今後、cLIFやcbFGFといった未分化維持因子を培地に加えて検討を行う。また前年度から、ニワトリ胚盤葉細胞の直接的な遺伝子改変技術として、最新のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムによる遺伝子改変技術の開発を行っている。これまでに、ニワトリの特定遺伝子部位をターゲットとするCRISPR/Cas9ベクターの作製を行い、ニワトリ繊維芽細胞への遺伝子導入において、目的遺伝子部位の改変を確認できた。今後、胚盤葉細胞へのベクター導入条件およびゲノム編集効率について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模シーケンサーとマイクロアレイ解析を用いたニワトリ胚盤葉細胞や ES細胞のトランスクリプトーム解析から、ニワトリ胚盤葉細胞で発現している約 37,000の遺伝子の配列情報の取得に成功している。この中から、未分化維持に関わっていると考えられる新規の遺伝子についても探索・抽出し、配列データからこれらの遺伝子を人工全合成により取得できた。これらの遺伝子を発現ユニットにもつレトロウイルスベクターを作製し、 iPS細胞の樹立を試みている。また、鳥類幹細胞への染色体編集技術の適用として、 CRISPR/Cas9システムを用いて dmrt, OVA, リゾチーム遺伝子の改変のためのベクターを作製し、ニワトリ繊維芽細胞を用いて同遺伝子の改変が可能であることを確認できた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新規抽出遺伝子の中でも山中ファクターであるSox2およびKlf4のファミリー遺伝子5つ(cSox3, cSox17, cKlf1, cKlf3, cKlf5)に着目し、それぞれ1因子ずつ代替することでニワトリiPS細胞の取得を試みた結果、day 7において複数のAP陽性コロニーが確認できたが、継続して未分化状態を維持して培養できていない。今後、cLIFやcbFGFといった未分化維持因子を培地に加えて検討を行う。また、鳥類幹細胞への染色体編集技術の適用により遺伝子改変鳥類を作出するために、CRISPR/Cas9システムを用いて dmrt, OVA, リゾチーム遺伝子の改変のためのベクターを作製し、ニワトリ繊維芽細胞を用いて同遺伝子の改変が可能であることを確認できた。今後は、ニワトリ胚盤葉細胞への遺伝子導入条件を検討する。
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