研究実績の概要 |
本研究では、多能性が知られているニワトリ胚盤葉細胞のトランスクリプトーム解析からニワトリ多能性幹細胞の樹立のための条件を見出し、同時に最近の染色体編集技術の適用を行い、多能性幹細胞によるトランスジェニック鳥類作製技術を開発することを目的とした。ニワトリ胚盤葉細胞のトランスクリプトーム解析によって、未分化維持に働いていると考えられる遺伝子や生殖系列分化を引き起こすために必要な遺伝子について、大規模シーケンサーとマイクロアレイ解析を用いたトランスクリプトーム解析を行い、Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, Nanog, Lin28といったこれまで報告されているiPS誘導因子遺伝子やそれらのファミリー遺伝子の発現状況と配列情報を得ることができた。これらの遺伝子を発現させるためのウイルスベクターを作製し、ニワトリ繊維芽細胞への遺伝子導入によってニワトリiPS細胞の樹立を試みた。今年度は胚盤葉細胞で多く発現しているSox2やKlf4のファミリー遺伝子について検討を行い、未分化状態の指標となるアルカリフォスファターゼを発現する細胞の割合が多くなる因子の抽出を行った。また、ニワトリ胚盤葉細胞の直接的な遺伝子改変技術として、最新のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムによる遺伝子改変技術の適用を試みた。ニワトリの特定遺伝子部位(オボアルブミン、リゾチーム遺伝子)をターゲットとするCRISPR/Cas9ベクタープラスミドの作製を行い、ニワトリ繊維芽細胞への遺伝子導入において、目的の遺伝子部位を効率的に改変可能なベクター設計に成功した。
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