研究課題/領域番号 |
26289320
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢入 健久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90313189)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 異常検知 / 航空宇宙システム / 機械学習 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、当初の計画通り、主に本研究の第3のサブテーマである「運用者と学習型異常検知器との持続的相互作用の励起法の開発」に取り組んだ。その目的は、人工衛星のような巨大システムの運用者が、持続的に学習型・データ駆動型のシステム監視アルゴリズムを利用する過程で、システムに関する新たな知見を得るための情報抽出、可視化、フィードバック方法を明らかにすることである。これら巨大システムから発生する監視用センサーデータは超高次元であることに加え、物理的意味や単位、スケール、動的性質、サンプリング周期などが異なり、画一的な扱いや俯瞰的な監視が困難となっている。それに加えて、人工衛星のように環境条件が動的に変化するようなシステムにおいては、外部環境や運用スケジュールに起因するデータパターンの変化が支配的であるため、本来検出したいシステムの変調や不具合の予兆を表す微細なデータパターンが埋没してしまうという問題があった。そこで、研究代表者らは、システムから発生する膨大な異種多次元時系列データに対して、データ標準化、変化点検知、外的環境に起因する周期・非定常成分の除去、変化相関に基づく異種変数群のクラスタリング、運用モードのグループ化を行うことにより、異種高次元時系列データを可視化し、システム状態の把握を容易にする手法を開発した。また、前年度までの研究成果であるデータ駆動型異常検知手法の詳細をまとめ、学術誌や国内外の会議で発表を行うとともに、プログラム公開のための実装に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、平成28年度も前年度までと同様に、当該年度のサブテーマ「運用者と学習型異常検知器との持続的相互作用の励起法の開発」をほぼ予定通りに実施し、当初期待された成果を得ることができた。これらの成果は国内外の学会や論文誌等で順次発表される予定である。また、将来的に公開を予定している宇宙機システムのための健康状態監視ソフトウェアのプロトタイプも作成しており、研究計画全体から見ても、おおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究の最終年度であり、前年度までに取り組んだ3つのサブテーマ、[Sub-1] 運用者への有用情報提供を主目的とした学習型異常検知法の確立、[Sub-2] 運用者から学習型状態監視器への知識転移促進方法の開発、[Sub-3] 運用者と学習型異常検知器との持続的相互作用の励起法の開発、の成果を統合して、「運用者と持続的知識相互作用を行う」学習型異常検知器を構築し、実証試験等を通じて総合的に評価することによって総括を行う。より具体的には、主に以下の3つの事項に取り組む。(i) 3つのサブテーマの成果に基づいて機能の取捨選択を行い、学習型異常検知システムの実装を完成させる。 (ii)過去の人工衛星データを利用し、数か月程度の模擬実験を行い、本研究の中心概念である「運用者と学習型異常検知器との持続的知識相互作用」の効果を総合的に評価する。 (iii) 本研究成果をソフトウェアパッケージとして公開し、国内外の宇宙プロジェクトへの普及を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、(1)当該年度の当初計画していた国際会議での発表・参加を研究スケジュールの都合上見合わせたこと。(2)採録となった国際学術誌の論文投稿費の請求が次年度になったこと。(3)当初購入を予定していた計算機が予定よりも安価に同等性能のものを入手できたこと。(4)同様に、研究室で既に所有している計算機資源を有効活用したこと、などである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は複数の国際会議での研究成果発表を予定しており、また、採録になった雑誌論文をオープンアクセスにするなど、積極的に研究成果発表を行うために研究費を使用する計画である。また、学習型監視システム開発に必要な計算機にも研究費を使用する。
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