本研究課題は、宇宙機システムの安全性・信頼性の向上を大局的な目標とし、特に近年急速に開発・普及が進んでいる学習型(データ駆動型)のシステム状態監視アルゴリズムとそれを利用するシステム運用者との持続的知識相互作用をいかにして実現するかという問題に取り組んできた。 本研究課題の最終年度である平成29年度は、前年までの3年間で取り組んできた3つのサブテーマ [Sub-1] 運用者への有用情報を主目的とした学習型異常検知法の確立、[Sub-2]運用者から学習型状態監視器への知識転移促進方法の開発、[Sub-3] 運用者と学習型状態監視器との持続的相互作用の励起法の開発、の完成と統合に取り組んだ。まず、[Sub-1]に関しては、人工システムから得られる高次元データを潜在変数モデルによってモデル化し学習する際に、潜在変数間の関係について専門家が有する様々な事前知識を埋め込むことによってモデル学習を効率化する手法に取り組んだ。また、[Sub-2]については、学習型状態監視器が発した警報が誤検知であると判明した場合にその事例を負のラベルサンプルとして学習し直すことで異常検知性能を向上させる枠組みを検討した。[Sub-3]に関しては前しては、従来のデータ駆動型異常検知の枠組みである1ショット的な学習-利用サイクルから、運用者・利用者による検出結果の評価と状態監視器へのフィードバックを加えた持続的な学習-利用サイクルを提案し、その検討・開発を行った。これらの研究成果は雑誌論文や国内外での学会発表、各種招待講演などの形で発表されているが、今後はより直接的に成果を社会還元するため、産業化も見据えて整理を行っているところである。
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