研究課題/領域番号 |
26289326
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
藤田 和央 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究員 (90281584)
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研究分担者 |
鈴木 俊之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究員 (20392839)
高柳 大樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究員 (70513422)
小澤 宇志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究員 (70567544)
野村 哲史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究員 (80709361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 航空宇宙流体力学 / 二酸化炭素 / 大気突入 / 輻射加熱 / 赤外線分光 / 火星探査 |
研究実績の概要 |
(1) 遠赤外分光システムの組立:遅延していたICCDカメラが納品され,極短時間遠赤外分光システムの組み立てを行い,校正・試運転し,運用可能な状態へ整備した.ここでは,遠赤外光学系を含めた全系を黒体炉によって校正し,量子効率の波長依存性の定量化,および絶対強度校正を行った.また対物以外からの遠赤外線迷光を遮断するために,光路周りに設置する液体窒素シュラウドの製作・調整を行った.以上によって,衝撃波管へ遠赤外分光システムの取り付けが完了し,CO2大気を作動ガスとする分光計測が実施可能となった. (2) 静的輻射モデルの検証:衝撃波を高圧・低速で運用し,衝撃波背後に熱的平衡領域を形成させて,熱化学平衡にある CO2 からの赤外放射スペクトルの分光計測を行った.また,輻射解析コードにより数値スペクトルを作成し,比較を行った.その結果,数値スペクトルは計測スペクトルの約 1/2 の強度しかなく,過小評価することが分かった.その原因を探った結果,輻射解析コードで従来用いていた CO2 の回転振動遷移データベースが不十分であることが分かった.これまで用いてきた HITEMP データベースは,温度範囲が低い(~3000 K)のに対し,対象とするプラズマは 6000 K 程度まで温度が上昇するため,高準位からの放射が顕著となる.HITEMP データベースには高準位からの遷移データが(低温では微少のため)割愛されており,これが過小評価の原因となっていることが判明した.そこで,CO2 の回転振動遷移用のデータベースとして,CDSD データベースを導入した結果,数値スペクトルは実験スペクトルと一致するようになった.これにより,静的輻射モデルの検証が完了し,遷移確率の精度が保証された. 以上により,当初計画していた平成27年度の計画を,計画通りに完了することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICCD カメラの納期遅延(当初では平成27年3月までに納品される予定であったが,平成27年6月に納品された)があったためやや遅延していたが,作業工程を入れ替えて,平成27年度の作業を一部前倒して平成26年度中に着手していたため,ICCD カメラ納品後,システムのインテグレーションを完了し,システムの校正・試運転を行う段階で,当初計画をキャッチアップすることができた.また,輻射解析コードの改良についても,当初計画通り,実験スペクトルを対象として,精度を改善することができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り進める. (1) 平成27年度中に静的輻射モデルの検証が完了しており,CO2 の各バンドスペクトルの回転振動遷移確率の精度は保証されたため,衝撃波背後の圧縮過程や,カプセル後方の膨張過程など,熱化学的非平衡領域で,CO2 からの赤外放射スペクトルが動的にどのような特性を示すかを,衝撃波管実験による衝撃波背後の分光,および膨張波管にカプセル模型を設置したウェーク領域の分光実験によって明らかにする.合わせて,3次元の流体解析コードと輻射解析コードを用いた比較解析によって,数値モデルの精度を検証し,熱化学プロセスを含めたモデルの改善を行って,最終的に,広範な飛行条件で熱空力環境の高精度予測が可能な数値モデルが獲得される. (2) 上記の結果として得られる流れ場-輻射解析を融合した数値モデル(以下,融合モデル)を工学応用として,現在検討が進められている火星着陸探査機の大気突入システムや,火星無着陸サンプルリターン機,火星エアロキャプチャ技術実証機,金星気球ミッションの大気突入システムの概念設計に実践応用する. (3) 以上の成果をとりまとめ,可能なものは論文化し,報告書を作成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
中赤外分光システムの納入遅延により遅延賠償金が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
衝撃波管を用いた実験における隔膜等の消耗品(装置運用費)として使用する.
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