研究課題/領域番号 |
26289328
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
船木 一幸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50311171)
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研究分担者 |
堀澤 秀之 東海大学, 工学部, 教授 (30256169)
奥野 喜裕 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (10194507)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / プラズマ・核融合 / 宇宙機推進 / MPDアークジェット / 有人惑星探査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有人火星ミッション等の大型深宇宙探査機の主推進を担う100Nクラス電磁プラズマ力学(MPD)スラスタシステムについて、その基本設計を得ることである。このクラスのMPDスラスタは、過去に試験されたことが無いことから、世界最高出力の電気推進を目指すこととなる。本研究では、スラスタ実験設備建設に必要な大規模な初期投資を回避するため、スラスタ内の物理現象や関連機器の特性をモデルで評価し、これらに基づいて推進システム性能を最適化する「モデルベース設計」の手法を導入する。平成26年度は、MPDスラスタシステム設計のために必要な電磁流体、熱構造、電源等システムの各要素のモデルを構築し、モデルベース設計を実施した。MPDスラスタ内の電磁流体現象を解析するMHDコードは、推力・推進性能等を算出する放電プラズマ(電磁流体)解析コード、電極への熱流束を推定するシース熱伝達モデルと、熱構造解析コードから構成され、解析ツール全体を反復利用することで、熱構造的に妥当で性能の高いスラスタ形状を求める。また、解析モデルの検証を行うための実験室実験の一部を実施した。MWクラスの定常運転はJAXA宇宙科学研究所の全消費電力に相当するなど現実的ではないため、放電時間が約1msのパルス状運転により推力・推進性能評価を行った。この試験では、20kAまでの大電流をコンデンサバンク(PFN)から供給して振り子式推力スタンドにて推力等を取得し、典型的な性能値としては、アルゴンを推進剤とした場合は1.1MWの投入電力に対して推力26N、比推力1500秒、効率18%が得られ、水素を推進剤とした場合は1.3MWの投入電力に対して推力19N、比推力4900秒、効率37%が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPDスラスタの数値設計、スラスタの製作ならびに実験評価の全てにおいて、想定どおりの成果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、各モデルの実験検証等を通したチューニングと、全体性能評価ツールの構築を行う。まず、スラスタの推進性能や熱・電極損耗等ついては、スケールモデル実験結果とモデル計算結果との比較によって、各モデルの精度向上をはかる。推進性能評価のための時間スケールモデル実験については、動作時間が1ミリ秒の間の瞬間的な温度分布の計測を実施することで、スラスタ熱伝達モデルの検証をはかる。この他、スラスタの実機用電源や水素供給系、放熱パネル等のサブシステム要素についても評価モデルを作成するが、水素については長期の低温保存技術が確立していないことから、アルミと水の反応を利用した生成法、水素をメチルシクロヘキサンという化学物質の形態で貯蔵する技術など、幾つかの方法についてトレードオフを行い、重量特性等データをモデル化する。また、最も有望な方式については、試作実験を実施する。このように各要素モデルをとりまとめることで、スラスタ解析モデルとサブシステムモデルとを統合したモデルによる設計を実施する。その際は、解析プロセスをできるだけ自動化し、深宇宙機へ適合する大電力スラスタシステム全体の最適設計を行う。 また、28年度は、最適なスラスタシステムを宇宙機推進システムの設計図としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
スラスタ製作ならびに計測系の調達工夫により、当初計画より経費の節約が出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
試験系の改良ならびにスラスタ改良に使用。
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